非上場・中小企業向けの株主総会対応とは?Q&A形式で詳しく説明

 

~はじめに~
Q1 どのような事項について株主総会決議が必要ですか。
Q2 会社法規定事項・定款事項ではないが株主総会決議をする場合があるが、なぜか?
Q3 定時株主総会を上場企業は決算日から3ヶ月以内に開催し、非上場企業は決算日から2ヶ月以内に開催しているのはなぜですか?
Q4 定時株主総会で計算書類の承認を行う予定だったが、問題が起こり定時株主総会を開催できなった場合に、臨時株主総会で代替することはできますか?
Q5 臨時株主総会ではどのような決議をされることが多いでしょうか?
Q6 定款の目的の記載について注意することは何ですか?
Q7 株主総会招集通知の発送について特に注意すべき点は何ですか
Q8 株主総会の開催場所について注意点はありますか。
Q9 株主総会の開催日時を決める際の注意点はありますか
Q10 株主から弁護士を代理人として株主総会に出席させたいと言われた場合はどのように対処すればよいですか?
Q11 委任状による議決権の行使がされる場合の注意点は何ですか?
Q12 非上場企業の招集通知作成の際に気をつけることはありますか。
Q13 議案の概要の記載について注意する点はありますか
Q14 附属明細書について総会で質問が来たら、議長や他の役員は回答義務がありますか?
Q15 非上場会社の剰余金処分(昔の利益配当)議案の注意点は何ですか?
Q16 非上場企業が報酬議案を決議する際に気をつけるべきポイントは何ですか。
Q17 取締役の報酬を減額する際に気をつけるべきポイントは何ですか。
Q18 取締役が退任する際に、株主総会決議を経ないで、役員退職慰労金を支給してしまった場合はどうしたらよいですか?
Q19 役員退職慰労金の議案の注意点を教えて下さい
Q20 株主総会で支給基準に基づく決定を委任された取締役会が基準に反して不支給または減額した場合はどうなるか?

 

 

 

~はじめに~

 

上場企業の株主総会対策については、セミナーや文献などが様々あります。他方で、数としては日本で99%以上を占めるはずの非上場企業を対象としたものはあまり多くありません。
そこで、これまであまり取り上げられてこなかった非上場企業の株主総会対策について、令和2年7月16日に「非上場企業の株主総会のチェックポイント」と題するセミナーを弁護士吉田良夫が行い、好評を博しました。本連載では、そのセミナーでの内容を元にQ&A形式で、実務のコツや、法令違反してしまいがちなポイントをご紹介いたします。

 

 

 

今回の内容は形式的・教科書的な制度説明だけではなく、実際に弁護士吉田良夫が非上場企業から質問を受けて頭を悩ました事例、それから文献の中で、非上場企業で起こる問題で解決策が見当たらないものついて、どういう状況で問題が起きるか、どのような考え方、やり方があるか、回避するためにはどうすればよいかをご紹介できればと思います。

 

 

 

非上場会社の株主総会は、株主総会に対して非常にコストをかける上場企業と異なり、弁護士に対するニーズが少ないため、マニュアルがあまりありません。

 

そのためにますます非上場企業側は、あまり資料がない状態のまま手探りで、過去の株主総会に使ってきた会社の古い事例を前提に総会対応しているところが多いようです。

 

しかし時代は変わります。

 

近年、法令順守の要求が強く、そしてこれから経済環境が厳しくなれば、お金の扱いについての目線が厳しくなります。株主総会を通じて、企業のお金が移動する機会は多くありますので、その観点から経済が豊かな時よりも、経済が厳しい時の方が、株主総会における法令遵守が経営側に求められます。

 

 

 

本連載は国内の非上場企業向けに情報をまとめたものです。会社法の制度は複雑で、取締役会の設置の有無、監査役会の有無、株の譲渡制限の有無など様々な要素によって、Q&Aの結論が変わってくることもあります。本稿では、取締役会があり、監査役会はなく監査役がいる、株に譲渡制限がついている会社を想定して記載しておりますが、具体的な事例に適用する場合には専門家のチェックを経るなど、取り扱いにはご注意ください。法律の枠組みを伝えることを優先し、些末な例外事象の説明は除外しているところもあります。また、本連載はセミナー公演時において適用される法令を前提としており、その後の法改正は反映しておりません。本連載により生じた一切の損害については責任を負いかねますのでご了承下さい。

 

 

 

Q1 どのような事項について株主総会決議が必要ですか。

 

A1 取締役会設置会社では例えば以下のような事項については、株主総会決議が必要となります。

 

・定款変更、合併、株式交換移転、会社分割、資本減少、解散等(会社の基礎的事項の変動)

 

・取締役の選任解任、監査役の選任解任など(役員の選任解任)

 

・計算書類の承認(上場会社では取締役会決議で承認され株主総会では報告事項)

 

・剰余金処分、第三者割当増資、第三者に対する新株の有利発行、自己株式取得(株主の重要な利害に関する事項)

 

・取締役の報酬、役員退職慰労金(報酬等)

 

 

 

1 総論

 

株主総会は原則的には一切の事項について決議をすることができる機関ですが(会社法295条1項)、取締役会を設置している場合は専門機関である取締役会に多くの決定事項が委ねられ、①会社法が規定する事項と②定款で定めた事項に限り、株主総会は決議できます(295条2項)。経営はプロである取締役たちに任せ、株主は重要なこと等必要があるときのみ判断をするべきという発想です。

 

そのような前提に立ち、会社法が株主総会の決議を必要とするとした事項については、定款で権限を取締役会に委譲しても無効となります(同3項)。

 

 

 

2 計算書類の承認について

 

(1) 上場企業では、監査法人が監査証明を出すので、計算書類は取締役会で決議するだけで良く、株主総会では決議はせずに報告だけ、ということになります(会社法439条)。

 

(2) しかし、非上場企業では株主総会で決議しないと、計算書類は確定しません。非上場企業において株主総会が適法に運営・決議ができないと、計算書類が確定されないので、その結果、納税金額が決まらないことになってしまいます。余談ですが、ある会社では50:50の2人の株主が対立し計算書類の確定ができないことから納税を仮の金額(確定前の金額)で行わなければならない事態に陥りました。

 

 

 

3 剰余金の配当について

 

剰余金の配当(いわゆる利益配当)は、平成17年に商法が会社法に変わった際に、重要な要件が追加されました。剰余金の配当の金額のみならず、剰余金の配当が「効力を生ずる日」も株主総会にて決議する必要があるという点です(454条1項3号)。

 

ところが伝統的な中小企業で利益の出ている紛争のない会社では、昔ながらの書式を使って、この効力発生要件である、「剰余金の配当が効力を生ずる日」を決議しないまま、ずっと剰余金支払をしていることがあるかもしれません。再度確認されることをお勧めします。

 

 

 

4 その他

 

第三者に対する新株の有利発行、自己株式取得、取締役の報酬(報酬は総額の意味)、役員退職慰労金などにも株主総会決議が必要です。

 

会社の社長が退任され、これまでの功労に報いるため役員退職慰労金を決議し、お金を払うのは当然のことです。しかし、株主総会決議なしにお金を払ってしまった、総会決議に入れ忘れて誰も気が付かなった、という問題も非上場企業では、起こり得ます。

 

 

 

Q2 会社法規定事項・定款事項ではないが株主総会決議をする場合があるが、なぜか?

 

A2 「勧告的決議」です。

 

取締役会のある会社の株主総会で決議できる事項は以下の2つです(会社法第295条2項)。

 

・会社法に規定する事項

 

・定款で定めた事項

 

しかし、これ以外の事項も株主総会で決議が行われることがあります。

 

例えば、近年では敵対的企業買収に対抗する防衛策の導入や発動に際して、定款変更による総会権限の拡大をしないまま株主総会の決議を経ることがあります(勧告的決議)。

 

この場合、株主総会決議としての法的効力は認められないとしても、株主による意見の表明という意味はあると考えられます。

 

非上場企業の場合には、株主全員が決議、賛成をすれば、この勧告的決議には法律上効力はなくとも、個別に株主が同意書を出したのと類似の効力が生じると考えられます。

 

株主総会で勧告的決議を行い、なるべく多くの株主が賛成した、というファクトを得ておけば、後日に、裁判提起された場合や行政に対し説明をする必要が生じた場合でも、株主の承認がある、株主は許容した、という説明をすることができ、事実上の正当化効力が生じるかもしれません。

 

法的に強い効力があるという意味ではありませんが、上記の理由で検討の余地はあると思います。

 

 

 

Q3 定時株主総会を上場企業は決算日から3ヶ月以内に開催し、非上場企業は決算日から2ヶ月以内に開催しているのはなぜですか?

 

A3 上場企業が3ヶ月以内なのは基準日制度のため、非上場企業が2ヶ月以内なのは納税のためと考えられます。

 

定時株主総会は上場企業では決算日から3か月以内に開催し、非上場企業は決算日から2か月以内に開催しています。それはなぜでしょうか?

 

上場企業は基準日制度を採用しており、決算日を基準日にしています。基準日制度とは、その基準となる日の株主名簿上の株主を、後日の権利行使できる者と定めることができる制度です(会社法124条1項)。上場会社では日々株主が入れ替わるため、この制度がないと株主総会の際に混乱をきたしてしまうからです。そして、基準日からの権利行使は3か月以内に行わなければならないこととされています(会社法124条2項)。

 

他方で非上場企業では、そもそも基準日制度を利用しないところがほとんどであり、株主総会で計算書類を承認、確定します。そして、その確定後、法人税を支払います。

 

法人税・消費税は決算日から原則として2か月以内に納付することとされており、決算を確定させて納税をするために2か月以内に定時株主総会を開催することが必要です。
(非上場企業でも「申告期限の延長の特例の申請書」により3月末決算でも6月末までに申告期限を延長することができ、その場合は6月末までに株主総会開催となります。但し、納税については、決算に基づいて事業年度末日から2ヵ月以内にしなくてはなりません。)

 

なお、上場企業では、計算書類は会計監査人(監査法人)の無限定適正意見(すべての重要な点において適正に表示されているという意見)を付した会計監査報告を頂いて、それにより、株主総会ではなく取締役会で計算書類を確定させます。そのため、3月末決算で、定時株主総会を6月末に開催することとしていても、既に取締役会で計算書類を確定しているので、それに基づいて納税ができます。

 

 

 

コラム-非上場企業で、決算を確定させずに納税するケース-
上記のように、非上場企業は、決算から2ヶ月以内に株主総会で計算書類を確定させ、納税を行います。
しかし、非上場企業では、株主2名が50%ずつの株を保有しあい、対立が激しく、株主総会開催ができない、開催しても株主総会で計算書類承認ができない、という混乱した事例がありえます。
この場合は、将来的に決算が株主総会で確定されることを願いながら、未確定の決算の数字を前提として納税を行うしかないと思います。

 

 

 

Q4 定時株主総会で計算書類の承認を行う予定だったが、問題が起こり定時株主総会を開催できなった場合に、臨時株主総会で代替することはできますか?

 

A4 できます。

 

最初に説明すべき事項として、定時株主総会を延期しても、それは延期された定時株主総会です。

 

上場会社は基準日制度により基準日から3ヶ月以内に定時株主総会を開催します(124条2項)。

 

しかし、2020年は新型コロナ問題のため、基準日から3ヶ月超えて定時株主総会を開催した上場会社が多数ありました。

 

 

 

この欄では、定時株主総会ではなく臨時株主総会で行う場合を検討します。

 

旧商法では、計算書類の承認・剰余金の配当は臨時株主総会ではできませんでした(旧商法283条1項参照)。

 

しかし、会社法(平成17年成立)では、臨時株主総会で、臨時計算書類承認、剰余金の配当が可能になりました(会社法441条4項)。

 

例えば以下のような場合です。

 

・議長である社長が体調不良を起こし、社長以外の方が代役として開催するのも急には難しい場合

 

・株主間紛争で株主が二つに分裂し両方とも議決権で過半数が取れず定時株主総会で計算書類を確定できない場合

 

 

 

臨時株主総会で計算書類を確定する必要がある場合は、臨時株主総会で計算書類を確定してください。

 

最もよくないのは、定時株主総会が開催できない、または定時株主総会で計算書類を確定できない場合に、「面倒だから来年の株主総会でやろう」と考え、計算書類確定の努力をあきらめることです。

 

剰余金の配当も、配当原資さえあれば、臨時株主総会で複数回の配当が可能です。

 

上場企業では剰余金の配当についての一定の厳格な条件を満たす場合には定款で取締役会に配当を決定する権限を与えることができます(会社法459条1項4号)。

 

日本の企業でも、この制度を使って米国企業のように四半期配当(年に4回配当)を行う上場会社があります。

 

 

 

Q5 臨時株主総会ではどのような決議をされることが多いでしょうか?

 

A5 取締役の選任・解任、第三者割当増資などを行うことが多いです。

 

取締役が3人いる会社で、取締役1名が死亡し、取締役が2人になり、補欠取締役を定めていなかったので(非上場企業で補欠取締役を定める会社は少数です)、取締役を1名追加する場合などが典型例です。

 

それ以外でも以下のような場合があります。

 

・新事業をスタートさせる際に、定款にその事業が会社の目的として記載されていないことがわかり、定款目的事項の追記(定款変更)を行う場合

 

・非公開会社の第三者割当増資

 

・第三者に対する新株の有利発行

 

・取締役解任

 

 

 

Q6 定款の目的の記載について注意することは何ですか?

 

A6 「前各号に付帯関連する一切の事業」でカバーしきれていない事業を行っていないか、という点です。

 

会社設立時に、定款で事業内容(目的)を思いつく限り20個も並べ、更に「全各号に付帯関連する一切の事業」と最後に付けておけば、これで定款の目的外の事業をしてしまうことはないだろうと安心するのが普通です。

 

しかし、「付帯関連」する事業は万能ではありません。

 

記載事項と全く別の事業に進出する場合は定款の目的から外れてしまいます。

 

時代が変化し、設立時は予想しなかった新事業に進出することはよくあります。

 

新規事業ではマーケティングは考えても定款変更(定款目的範囲内かどうか)までは注意が向かないかもしれません。

 

しかし、定款目的外事業は無効ですから要注意です。

 

 

 

100%出資の子会社事業も要注意です。

 

100%子会社の事業は親会社の事業と考えるのが一般的な考え方です。

 

100%子会社が新規事業を始めれば、「付帯関連」しない事業が生じるかもしれません。

 

また、M&Aで新規事業を開始する場合も定款目的の範囲内かどうかを確認してください。

 

解決方法として、定款の目的に、「商業、商取引、法律に抵触しないあらゆる事業」を入れる方法もあります(参照:「会社法の実務」中村直人/倉橋雄作著 商事法務 41頁)。

 

 

 

Q7 株主総会招集通知の発送について特に注意すべき点は何ですか

 

A7 株主名簿の記載に忠実に発送することと、発送日と総会当日の間に1週間必要(発送日と当日を含めると9日間必要)であること等です。

 

非公開会社では原則として、株主総会の日の一週間前までに、株主に対してその通知を発しなければなりません(会社法299条1項かっこ書)。

 

株主総会が5月30日の場合に、株主総会招集通知の発送はいつまでに行うべきでしょうか。

 

総会日と発送日の間に7日必要(中7日)です。

 

発送日と株主総会当日を含めると9日間必要です。

 

従って、5月22日には株主総会招集通知を出す必要があります。

 

なお、決算取締役会で計算書類承認をしますが、決算取締役会と株主総会の間は中14日必要です。

 

株主総会が5月30日なら、決算取締役会は5月15日までに行う必要があります。

 

 

 

株主総会招集通知の発送は、全て株主名簿の記載に基づく必要があります。

 


会社が困るのは、招集通知発送前(株主総会の前)に、会社が株主のご逝去を知っている場合です。

 

ご遺族に対し、ご逝去株主の名前で招集通知を出しにくい、と思う気持ちは当然です。

 

しかし、株式の相続人から株主名簿の記載変更の求めがあるまで、株主名簿の記載とおりに発送する必要があります。

 

では何か良い方法はないでしょうか。

 

非上場企業では、例えば「法律の定めで株主名簿記載のとおり、亡くなられた方のお名前でお送りしますが、ご容赦ください」という内容でご遺族に連絡を入れておいた方がよいでしょう。

 

会社は、ご逝去株主(ご遺族)に対しても、株主名簿に基づいて発送して下さい。

 

 

 

議決権のない株主に対しては株主総会の招集通知の発送は不要です。

 

 

 

所在不明株主には、招集通知を送る必要はありません。

 

株主総会招集通知を発送したけれど、相手(株主)が招集通知を受領しないで招集通知が会社に戻ってきた場合に、それが5年以上になると、その株主は所在不明株主になります。

 

戻ってきた招集通知(郵送した封筒)は廃棄しないで証拠として保管してください。

 

「5年以上」のカウントも注意してください。

 

たとえば、2021年5月株主総会から招集通知が戻ってきた場合は、「5年以上」になるのは、2025年5月ではなく、2026年5月です。

 

 

 

Q8 株主総会の開催場所について注意点はありますか。

 

A8 定款に記載(本店所在地等)があればその記載とおりに開催し、記載がなければ適切な場所で開催する必要があります。

 

定款に記載(本店所在地など)があれば、その記載どおりに開催します。

 

定款に開催場所について記載がなければ、開催場所に制約はなく、どこでも開催できます。

 

臨機応変に開催できるという意味で、開催場所の文言の削除は便利です。

 

 

 

他方で、注意点があります。

 

過去に開催した株主総会開催場所と著しく離れた場所で開催する時は、その離れた場所で株主総会をすると決定した理由も取締役会で決議し、招集通知に記載して送付する必要があります。(会社法施行規則63条2号,会社法298条1項5号,同298条4項、同299条4項)。

 

株主が出席できない場所で株主総会を開催すると、出席できない株主から、(自分を出席させないことを狙った招集だという理由で)株主総会の決議取消訴訟を提起されるかもしれません。

 

 

 

Q9 株主総会の開催日時を決める際の注意点はありますか

 

A9 前期の定時株主総会の日と著しく離れた日を定時株主総会日とするときは、その理由も取締役会で決議し、招集通知にその理由を記載する必要があります。

 

定時株主総会の開催日時を、前期の定時株主総会の応当日と著しく離れた日とする場合には、その日時にした決定理由も取締役会で決議し、招集通知にその理由を記載する必要があります(会社法施行規則63条1号イ、会社法298条1項5号、同298条4項、同299条4項)。

 

「応当日と著しく離れた日」とあるので、すこしの違いは問題ないと考えられますが、知識として上記を理解してください。

 

 

 

コラム -招集通知の言葉について

 

招集通知の目的事項とは、報告事項と決議事項

 

報告事項は、会社の業績についての事業報告です。

 

業界はこのような感じで、我が社はこのような感じでした、という報告が一般的です。

 

決議事項には、「議題」と「議案」があります。

 

議題は「計算書類承認の件」、「取締役〇名選任の件」など、決議事項の具体的内容を含まない題目(テーマ)です。具体的内容は含まれません。

 

議案は決議のドラフト、議題の具体的内容です。

 

計算書類の具体的「内容」、選任する候補者の具体的「内容」(誰々)などです。

 

 

 

株主総会参考書類とは

 

書面投票又は電子投票を採用する場合(非上場企業では少ないと思います)に、株主が賛否判断をする際の参考情報が記載された書面です。

 

ここには議案、決議のドラフト等が記載されます。

 

 

 

議決権行使書面(書面投票)とは

 

株主自身が株主総会当日に会場へ行かず、自分が出席しないで議決権を書面により行使する際の、賛否の意思を表記する書面のことです。

 

上場企業では議決権行使は議決権行使書面を使う書面投票がほとんどです。

 

 

 

電子投票( 電磁的方法による議決権行使)とは

 

会社の設置するウェブサイトにアクセスして議案の賛否を入力すること等により電子投票を行う方法です。
非上場企業では株主数が多い会社でも電子投票は非常に少なく、書面投票の採用がベターと思います。

 

 

 

 

 

代理人による議決権行使

 

議決権の代理行使とは、委任状により他者を自分の代理人として出席させ、会場で代理人により議決権行使する方法です。

 

代理人は議決権行使、意見発言、質問、動議提出までできることが多いです(委任状の代理権限によります)。

 

定款に「代理人は株主に限り、代理人の人数は1名」という定めがある場合が多いです。

 

代理人出席が問題となったら、最初に定款を確認し専門家に相談するとよいでしょう。

 

 

 

Q10 定款に「代理人は株主に限り、代理人の人数は1名」という定めがある場合に、株主から、弁護士を代理人として株主総会に出席させ権利行使させたいと言われた場合はどのように対処すればよいですか?

 

A10 裁判所の結論は分かれています。現時点の判例状況では、会社は「認める、認めない」について、どちらも採用できますし、どちらかを採用しないと違法になるという断定は難しいです。しかし、弁護士代理を認めた場合は、その会社では弁護士代理が先例になる可能性はあります。

 

株主が自分の代わりに弁護士を代理人として株主総会に出席させ、質問させたり、議案について修正動議を出させたり、手続的動議を出させることを希望する場合に、会社として認めてよいかという問題です。

 

議案の修正動議の具体例

 

・配当一株あたりの金額の増額、

 

・「取締役5名選任の件」を「取締役4名選任の件」に変更、

 

取締役の増員は議案の修正動議ではありません(取締役5人を6人に増員する要求は議案の修正ではなく、議題の提案と考えられ、議題の提案は別個要件を満たす必要があるからです)。

 

 

 

手続的動議は、株主総会の進行方法に異議を出す動議で、議長交代が典型例です。

 

 

 

定款に、「代理人は株主に限り、代理人の人数は1名までとする」と記載されている場合は、弁護士は株主ではないので、認める必要はないようにも思えますが、裁判例の結論は分かれています。

 

特に上場会社では認められやすい傾向にあるようです。

 

(この論点については、田中亘会社法第3版183~185が読みやすいと思います。)

 

 

 

以下はコラム的記述ですが、

 

非上場企業では計算書類が決議事項ですから、本件論点の時は

 

「この計算書類に不正(お金のごまかし)があるのではないか」

 

「代理を認めなければ株主代表訴訟を提起する」

 

等のやりとりがなされがちです。

 

上記の場合は、会社は専門家に相談しながら冷静に対応することが良いです。

 

客観的事情がどうであれ、会社が感情的になることは得策ではありません。

 

 

 

Q11 委任状による議決権の行使がされる場合の注意点は何ですか?

 

A11 定款の定め、委任状の内容(修正動議を出すこと、修正動議に対する質問と投票をすることが含まれているか)、代理人資格を確認してください。

 

平時でも議長に一任する委任状はよく用いられます。

 

問題は対立関係にある株主の委任状の対方法です。

 

(確認すべき事項)

 

・定款に「代理人は株主に限り、代理人の人数は1名までとする」とあるか

 

・反対株主の委任状の委任事項に「修正動議を出す旨、修正動議に対する質問をする旨、投票する旨」があるか

 

代理人は1名で会社の株主であれば、対立株主の代理人の株主総会における発言、議決権行使等を認めてください。

 

弁護士や会計士が代理人の場合は前述Qのとおりです。

 

 

 

2 代理人資格の確認方法について

 

弁護士と称する者が、当日、委任状を持参し「代理人なので株主総会に出席します」と来場した場合の対応法はどうしたらよいでしょうか。

 

 

 

弁護士であれば前記Qのとおりです。

 

弁護士であることの確認方法は以下のとおりです。

 

・弁護士の身分証明書の確認(写真撮影、コピー等)

 

・記章(いわゆる弁護士バッジ)と登録番号の確認

 

 

 

Q12 非上場企業の招集通知作成の際に気をつけることはありますか。

 

A12 必要記載事項の抜け漏れがないか、添付する書類に漏れはないかを確認してください。

 

発信日・開催日時・場所・目的事項(報告事項、決議事項、議案の概要)に誤記・漏れはないか。

 

事業報告に昨年記載部分や誤記等のケアレスミスはないか(出席株主から誤記を指摘されないように)

 

招集通知は過年度のデータを上書きして作成します。

 

本年度情報を追記して、昨年度情報を削除すべきなのに、削除していない部分が残ったまま印刷・送付することは「あります」。

 

念のため、十分に確認してください。

 

計算書類(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表)の作成送付はしているか。

 

計算書類とは、貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表の4つです(会社法435条2項、会社計算規則59条1項)。

 

株主資本等変動計算書は、貸借対照表の純資産の部の一会計期間における変動額のうち、主として、株主に帰属する部分である株主資本の各項目の変動事由を報告するために作成される決算書です。

 

これは計算書類の一部であり、すべての会社に作成する義務があります。

 

 

 

個別注記表とは、重要な会計方針に関する注記、貸借対照表に関する注記、損益計算書に関する注記など、各計算書類に記載されていた注記を1つの書面として一覧表示するもので、会社法により計算書類の一部となりました。

 

個別注記表については、「注記表」という1つの書面として作成する必要はなく、貸借対照表等の各計算書類の注記事項として記載してもよいです。

 

 

 

株主資本等変動計算書・個別注記表まで作成しているか確認してください。

 

 

 

④附属明細書は、作成義務はあるが、発送する必要はない(閲覧謄写対象になる)。

 

附属明細書は、有形固定資産及び無形固定資産の明細、引当金の明細、販売費及び一般管理費の明細についての事項のほか、株式会社の貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び個別注記表の内容を補足する重要な事項を表示する書類(会社計算規則第117条)です。

 

計算書類の附属明細書は、会社法第435条第2項により作成義務がありますが、株主総会招集通知に添付して発送する義務はありません(会社法第437条参照)。

 

株主から交付要求があれば閲覧謄写の対象になるだけです(442条3項)。

 

 

 

ワンポイントアドバイス

 

総会の場で対立株主から附属明細書の交付を要求されたが、会社は作成していなかった場合は、正直にその旨を伝え、総会終了後に直ちに作成すれば問題はありません。

 

 

 

⑤監査報告の省略について(2020年の対応)

 

2020年6月の上場会社の株主総会では、新型コロナウィルスの関係で、招集通知に「法令違反はなく、特に指摘する事項はない」旨の監査報告書を同封し、実際の株主総会では監査役の監査報告を省略する例が多く見られました。

 

しかし例年であれば、監査役は株主の前に出て、監査報告書の全文を読み上げていました。

 

この意味ですが、会社法第384条は、「監査役は法令もしくは定款に違反し、著しく不当であると認める事項がある場合には、その調査の結果を株主総会で報告しなければならない」とあります。

 

つまり、「問題がある時だけ報告し、問題がなければ報告しなくて良い」という意味です。

 

そこで、2020年は、接触を短くする、時間を短くする観点から、監査役は報告を省略するために前述の対応を行いました。

 

従来の株主総会で、監査役が出席株主に行っていた報告は、会社法が定める義務ではないが、株主に対し儀礼的に行っていたセレモニーと理解することができます。

 

今後も、新型コロナウィルスへの対応、総会短縮の必要性、監査役の出席困難な時などは、監査役の報告として問題事項の指摘がないのであれば、株主総会当日の報告を省略しても、監査報告の面では違法ではありません。

 

しかし、出席できるのに出席しない場合は、株主総会で質問が来た時に回答できない訳ですから、監査役にとって善管注意義務違反の問題がありえます。

 

 

 

⑥会社側を受任者とする委任状(足を運ばない株主の議決権行使のため)

 

株主総会を成立させるためには、株主総会に出席した株主の議決権の合計が過半数に達している必要があります(会社法309条1項:定足数。定款で引き下げ可。)。

 

来場しない株主には議長一任の委任状を依頼することが一般的です。

 

 

 

⑦書面投票をしない場合は、株主総会参考書類・議決権行使書面はない。

 

会社法301条1項は「取締役会で書面投票をすることができることを定めた場合は、招集通知の発出に際して、株主総会参考書類と議決権行使書面を交付しなければならない」と定めています。

 

反対解釈として、書面投票を採用しなければ、株主総会参考書類と議決権行使書面は不要です。

 

委任状投票(他人に委ねる投票)と、書面投票(株主総会に出席しないで株主自身が書面で行う投票)は一見似ていますが、異なります。

 

 

 

Q13 議案の概要の記載について注意する点はありますか

 

A13 議案の概要の記載が特に必要なものは、取締役会で決定をして具体的に記載する必要があります

 

書面投票、電子投票を採用しない場合は株主に株主総会参考書類を交付する必要はありません(会社法301条、同法302条)。

 

しかし、以下の場合は、議題の他、議案の概要を決定し(会社法施行規則63条7号)、書面で通知(郵送が一般)する必要があります(会社法第298条1項5号、同法第299条4項、会社法施行規則63条7号)。

 

 

 

・議案の概要(議案が確定していない場合は、その旨)の記載が必要な事項(例)

 

役員等の選任

 

役員等の報酬等

 

全部取得条項付種類株式の取得

 

株式の併合

 

特に有利な金額で募集株式を引き受ける者の募集

 

特に有利な条件有利な金額での募集新株予約権を引き受ける者の募集

 

事業譲渡等

 

定款変更

 

合併

 

吸収分割

 

新設分割

 

株式交換

 

株式移転

 

 

 

Q14 附属明細書について総会で質問が来たら、議長や他の役員は回答義務がありますか?

 

A14 計算書類の附属明細書の記載事項を敷衍する程度については説明義務がある、と考えられます。

 

計算書類などの株主総会での扱いについて整理すると以下のとおりです。

 

1 株式会社は、各事業年度に係る計算書類及び事業報告並びにこれらの付属明細書を作成する(会社法435条2項)。

 

2 取締役会設置会社では、担当取締役が計算書類・事業報告・付属明細書を作成し、監査役監査を受け、決算承認取締役会の承認を受ける(会社法436条1項、同条3項)。

 

3 取締役会設置会社では、取締役は、定時株主総会の招集通知送付の際に、計算書類・事業報告を株主へ提供(送付)する(会社法437条)。

 

4 計算書類は株主総会の承認(普通決議)をうける(会社法438条2項)。

 

 

 

説明義務の範囲はなにか(決議事項と報告事項)。

 

 

 

株主総会では取締役・監査役には「必要な説明」をする義務があります(会社法314条)。

 

「必要な」範囲とは、賛成・反対の意思決定をするために必要な情報で、要するに抽象的で合理的な株主が知りたいと思うような事項が、説明義務の範囲です。

 

計算書類については附属明細書の記載事項を敷衍する程度です。

 

事業報告では計算書類をみれば会社の概要が判明すると考えられ、そのため事業報告の説明義務も計算書類の附属明細書を敷衍する程度が説明義務の範囲と理解されます。

 

 

 

以下は説明を拒絶できる場合です(会社法314条、会社法施行規則71条)。

 

①    株主より説明を求められた事項が株主総会の目的事項に関しないものである場合。

 

②    説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合。

 

③    株主が説明を求めた事項について説明をするために調査が必要である場合。(ただし、株主から相当期間前に当該事項を会社に対して通知した場合、又は、必要な調査が著しく容易である場合は説明義務がある)。

 

④    株主が説明を求めた事項について説明をすることにより株式会社その他の者(当該株主を除く)の権利を侵害することとなる場合。

 

⑤    株主が当該株主総会において実質的に同一の事項について繰り返し説明を求める場合。

 

⑥    説明しないことについて正当な理由がある場合。

 

 

 

(参照:「会社法の実務」中村直人/倉橋雄作著 商事法務 125~129頁)

 

 

 

Q15 非上場会社の剰余金の配当(昔の利益配当)議案の注意点は何ですか?

 

A15 「剰余金の配当が効力を生じる日」を記載していない会社があるため、注意してください。

 

議案に「剰余金の配当がその効力を生じる日」(会社法454条1項3号)の記載があるか確認してください。

 

会社法になる前の商法の時代には、効力発生日は要件ではありませんでした。

 

平成17年に旧商法から会社法に変わり「剰余金の配当が効力を生じる日」が新たに要件となりました。

 

旧商法時代から同じ書式を使っている会社は是非確認してください。

 

この要件を決議していない場合は、法的には、「配当の効力が生じる日がない」ことになり、配当済みの金銭はどうなるのか?という問題になります。

 

受領した株主も困ります。

 

弁護士チェックのないまま従来書式を慣例的に活用している会社は、念のため確認してください。

 

 

 

(サンプル)

 

1 配当財産の種類

 

金銭

 

2 株主に対する配当財産の割当てに関する事項及びその総額

 

当社普通株式1株につき    金○円

 

配当総額       ○○○○○○円

 

3 剰余金の配当が効力を生じる日

 

2020年○月○日

 

 

 

Q16 非上場企業が報酬議案を決議する際に気をつけるべきポイントは何ですか。

 

A16 報酬として決議すべき事項は意外に広いので、今回の議案が役員報酬のみの決議でよいか注意してください。

 

1 「額が確定している報酬」は、その額を決議してください(361条1項1号)。

 

株主総会で一度、報酬枠の決議があれば、それ以降の報酬支払いは枠内であれば総会決議は不要です。

 

取締役会が各取締役の具体的報酬決定をします。

 

通常は取締役会決議で社長一任となり、社長が前記株主総会決議の枠内で各取締役の報酬を決定します。

 

取締役の任期ごとに報酬決定をする必要があるので、再選の場合は、そのたびに取締役会で社長一任決議をして、社長が各取締役の報酬決定をします。

 

 

 

2 「額が確定していない報酬」は具体的な算定方法を決議します(同項2号)。

 

 

 

3 「金銭でない報酬」は具体的内容を決議します(同項6号)。

 

金銭でない報酬が一番問題になります。

 

(ケースバイケースですが、以下も報酬になる可能性があります)

 

・低賃料による社宅提供、

 

・取締役の親族を保険金受取人とする生命保険契約、

 

・社長専用の高価な社用車

 

 

 

決議する具体的内容は何でしょうか。

 

・社宅を安価に提供した場合、市場賃料と実際に取締役が負担する賃料の差額分、例えば市場相場の賃料は100万円で、社長が支払う賃料は5万円なので、社長は95万円分を安く利用できるという内容が「金銭でない報酬の具体的内容」と思われます。

 

 

 

4 上記1~3について、報酬として定め、既に定めた内容を改定する場合は、株主総会で「当該事項を相当とする理由を説明」する義務があります(同条4項)。

 

 

 

Q17 取締役の報酬を減額する際に気をつけるべきポイントは何ですか。

 

A17 本人への十分な説明と、同意書の取得をして下さい。

 

取締役の報酬額が具体的に定められた場合、その額は取締役・会社間の契約内容になりますから、その後に当該取締役の職務内容に著しい変更があっても、同人の同意がない限り、株主総会決議によっても報酬の額を減額することはできません(最判平4・12・18)。

 

地裁判決には、「報酬減額に黙示に同意した」減額肯定判決(東京地裁平2・4・20)もありますが、地裁判決でも「報酬などの減額への黙示の同意の存在は簡単に認められるべきものではない」という減額否定判決(名古屋地裁H9.11.21判決、福岡高裁H16.12.21判決)もあります。

 

最高裁判決の存在、最高裁判決後の地裁判決を考えると、減額取締役の同意は不可欠で、それがない場合は減額できないと考えるべきです。

 

(参照:「会社法」第8版 江頭憲治郎著 有斐閣 472~473頁参照)

 

 

 

大事なのは「減額同意の取得の仕方」です。

 

労働法では、会社が雇用契約の労働者から賃料減額等の労働者に不利な事項について同意書面を得たのに、真意の同意ではないという理由で無効になる判決が多数あります。

 

取締役は委任契約で労働者の雇用契約ではありませんが、上記労働法の多数の判決例を前提にすると、中小企業の取締役の報酬減額の同意書面については、

 

1)当該取締役によく説明をする

 

2)明確な同意書を取得する

 

は行った方がよいと考えます。

 

上記を実行しても中小企業では、裁判になれば「減額同意が無効」になる可能性はありうると考えます。

 

 

 

報酬減額が問題となる場合は、その取締役の仕事内容(パフォーマンス)に会社が不満を抱いている場合がほとんどです。

 

 

 

そのため、報酬減額問題は以下の問題に展開する傾向があります。

 

・取締役への辞任要求

 

・辞任しない場合は取締役の解任

 

 

 

取締役解任は、株主総会で普通決議があれば実行できます(会社法339条1項)。

 

しかし、「解任についての正当な事由」がない限り、会社は解任された者(旧取締役)に残任期報酬相当額を支払う義務があります(会社法339条2項)。

 

この「解任正当事由」は裁判では非常にハードルが高く、解任正当理由ありと認定される(解任取締役に支払う必要がない)事例は少ないです。

 

取締役任期が2年であれば最大でも2年分報酬相当額以内ですが、

 

もし任期が長期間であればその額も高額になります。

 

取締役解任を検討する際は上記周辺事項も検討することが求められます。

 

 

 

Q18 取締役が退任する際に、株主総会決議を経ないで、役員退職慰労金を支給してしまった場合はどうしたらよいですか?

 

A18 臨時株主総会を開き、追認決議をすることが望ましいです。

 

社長や取締役が退任する際に、株主総会決議を経ないで役員退職慰労金を支給してしまった場合には、臨時株主総会を開き、支給決議を行い、その決議をもとにお金を払うという処理をおすすめします。

 

 

 

すでに役員退職慰労金として支給済みの場合でも、仮払いにして、臨時株主総会決議により、仮払いから本払いにできるか、を検討してはいかがでしょうか。

 

期をまたいでしまうと帳簿処理がより複雑になります。

 

税理士とも相談しつつ、気が付いた時点ですみやかに株主総会決議による追認決議をお勧めします。

 

 

 

Q19 役員退職慰労金の議案の注意点を教えて下さい

 

A19 支給基準についての説明を求められた場合に備え、説明をする準備をしておいてください。

 

退職慰労金も在職中の職務執行の対価なので、報酬の一類型として、株主総会で決議が必要です。

 

日本では具体的金額を株主に知られたくないという感覚があり、

 

退職慰労金については総額(最高限度額)を明示しないで具体的金額、支給期日、支給方法等を、取締役会に一任する株主総会決議がなされるのが通例です。

 

上記については最高裁判決が多数あり、判例は、無条件に取締役会に決定を一任するのではなく、支給基準(会社業績、退任取締役の地位・勤続年数・功績等から決まる)を株主が推知しうる状況において、当該基準に従い決定すべきことを委任する趣旨の決議であれば無効ではないとしています。

 

 

 

「推知しうる状況」とは、株主が本店で請求すれば基準の説明を受けられる措置を講じる(役員退職金支給規定が存在し、その規定を閲覧できる)ことをいいます。

 

 

 

なお、書面投票制度で議決権行使がなされる会社では会社施行規則82条2項で上記と同趣旨を規定しています。

 

 

 

注意事項があります。

 

本店に役員退職金支給規定があり、株主が閲覧できる場合であっても、株主総会の議場において株主から質問があった際に、「閲覧をしてください」というだけでは適切な説明がなされたとは言えず、違法(役員退職慰労金支給決議が無効)となる可能性が高いのでご注意ください(東京地裁昭和63年1月28日判決参照)。

 

(参照:「会社法」第8版 江頭憲治郎著 有斐閣 481~482頁)

 

 

 

・[議案のサンプル]

 

議題 

 

取締役1名に対し退職慰労金贈呈の件

 

議案 

 

取締役○○は、本総会終結の時をもって任期満了により退任されますので、在任中の功労に報いるため、当社役員退職慰労金規程に基づき、相当額の範囲内で退職慰労金を贈呈することといたしたく存じます。

 

なお、その具体的額、贈呈の時期、方法等は、取締役会にご一任願いたいと存じます。

 

 

 

Q20 株主総会で支給基準に基づく決定を委任された取締役会が基準に反して不支給または減額した場合はどうなるか?

 

A20 基準に反する不支給や減額については、不法行為が成立し損害賠償請求をされる可能性があります。

 

不支給又は減額に関する裁判例としては以下のようなものがあります。

 

(下記①~⑤の裁判例について、「会社法」第8版 江頭憲治郎著 有斐閣 482頁参照)

 

 

 

①東京地判H6.12.20・・・不支給の事例

 

株主総会決議で、代表取締役を退任した者に対し退任慰労金を支給することとし、その具体的金額、時期、方法等の決定を取締役会に一任したのに、取締役会が具体的な支給に関する取締役会決議をしなかったので、支給をうけるはずの退任取締役が会社と社長に対し不法行為による損害賠償を求め、認められた事例です。

 

 

 

②東京高判H.9.12.4・・・取引損害の責任を取らされ減額された事例

 

退任取締役の退職慰労金について、株主総会で、会社における一定の基準に従い相当額の範囲内で取締役会に一任する旨決議し、これを受けた取締役会が、退任取締役が担当した取引により会社が被った損失を減額分として金額決定したところ、退任取締役が減額分を役員退職慰労金として請求し、認められた事例です。

 

※この判決だけが不法行為ではなく役員退職慰労金として請求を認めています。

 

 

 

③福岡地判H10.5.18・・・支払いを遅延された事例

 

株主総会において社内規定に基づいて退職慰労金を支払うこととし、金額等を取締役会に一任する旨決議し、これを受けた取締役会が、未回収の売掛金があることを理由に右支払は当該退職役員が回収してから支払う旨の決議をしたところ、退任取締役が、会社と社長に対し不法行為による損害賠償を請求し、認められた事例です。

 

 

 

④東京高判H12.6.21・・・退職慰労金が支給されなかった事例

 

株主総会において、退任取締役に対し退職慰労金を支給することを決定し、その金額などの決定を会社の取締役会に一任した場合であっても、取締役会で退職慰労金を支給する旨の決定がない限り、退職慰労金を請求できないと判断した事例です。

 

但し、判決文では「不法行為……損害賠償を求めることができるかどうかはともかく」という文言もあり、不法行為として請求がなされていたら損害賠償が認められた可能性もあると思われます。

 

⑤名古屋地判H14.1.17・・・支給が恣意的に低額であった事例

 

複雑な事例ですが、不法行為としての損害賠償が争点となった事例です。役員退職慰労金について功労加算をしなかったことは不法行為にならないが、「非常勤基礎給は……減額前の1375万円として算出すべき……30万円として算出したB社長の本件決定は……報復意図が容易に推認され、不法行為を構成する」という判断をした事例です。

 

 

 

②の判決例だけが不法行為ではなく役員退職慰労金として請求を認めています。

 

②は、支給基準を前提にして具体的支給額を取締役会で決議したが、その支給基準の判断に誤りがあった(支給基準には減額の場合も定められているが、本件では減額が認められない事案だった)ため、取締役会での支給基準があることを前提に減額されない役員退職慰労金の請求を認めたという意味だと理解できます。

 

他方で、②以外の判決例は、そもそも基準に沿っていない事案(不支給(①④)、基準が認めていない理由で減額した事案(③))、基準が認めている裁量権を逸脱した事案(⑤)であると理解できます。

 

 

 

以上の5判決例を公式化すると以下の整理ができるだろうと考えております。

 

 

 

株主総会で役員退職慰労金の支給を決議し(支給基準あり)、取締役会に一任した場合に、
・取締役会が決議しない、
・支給基準にない減額をする、
・事実上減額になる条件をつける(未回収を回収してから考える等)、
・支給算定基準の月額報酬を恣意的に大幅減額する、
等の事情があれば、不法行為が成立する。

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