懲戒処分で間違わない方法とは?

~Q初めて懲戒処分をする予定です。どうしたらよいでしょうか?~

~Q今までの懲戒処分のやり方でいいのか心配になりました。正しい懲戒処分の仕方を教えてください~

このような相談を当事務所の弁護士が受けることがよくあります。

懲戒処分は、社員が社内で問題を起こしてしまった場合に企業秩序を維持するためにも行う必要があり、どの企業でも行う可能性があります。

しかし、懲戒処分は一種の制裁であり、これを受ける社員にとっては重大な不利益となるものであり、法的紛争に発展してしまう危険が潜んでいます。

そこで、法的紛争となるリスクを減らすためにも、懲戒処分の適切な進め方を確認しておく必要があります。

【目次】
1 懲戒処分はどのように進めればいいのですか?
2 懲戒処分を行う際は各企業の就業規則や前例が重要
3 懲戒処分の種類と注意点は?
4 懲戒処分の相場はありますか?
5 懲戒処分でお悩みの経営者様は当事務所にご相談ください!

1 懲戒処分はどのように進めればいいのですか?

 懲戒処分は、一般的に下記図の流れで進めていきます。

 なお、懲戒処分を行う際には賞罰委員会懲戒委員会を開催することを就業規則で定めている場合には、下記図に加えて、賞罰委員会や懲戒委員会の開催も必要となります。

① 事実確認(関係者からのヒアリング、客観的な証拠の収集)

社員が何らかの非違行為を行った疑いが生じた場合、まずはその非違行為を調査して証拠を収集することになります。

これは、懲戒処分の要件として、社員の非違行為が就業規則で定められた懲戒事由に該当することが必要であるためです(労働契約法15条の「客観的に合理的な理由」は、このことを意味しています。)。

懲戒処分の対象となる非違行為は、証拠に基づいて客観的に存在すると認められなければならないため、調査を行う際は証拠を収集することも重要です。

調査の対象としては、当事者や関係者などの「人」と、書類や電子データなどの「物」の二つがあります。

最初に当事者や関係者から聴き取り調査をしてしまうと、書類や電子データなどの証拠を隠されたり、破棄されたりしてしまうため、調査は原則として「物」から行います

そして、「物」の調査を一通り終えてから、当事者や関係者からの聴き取りを行うことになります。

また、事実確認の調査には、ある程度の期間が必要となりますが、その間に非違行為をしたと疑われる社員を働かせ続けると、再び非違行為をしたり、証拠を隠滅されてしまったりする可能性もあります。

このような可能性がある場合には、社員に対して業務命令としての自宅待機命令を行うこともあります。

もっとも、この自宅待機命令は、懲戒処分としての出勤停止ではありませんので、自宅待機期間中の賃金を支払わなければならず、また、自宅待機期間も短期間とする必要があります。

② 当事者への聴聞(弁明の機会を付与)

懲戒処分の対象となる非違行為のことを一番知っているのは、非違行為をしたと疑われる当事者ですので、当事者からの聴き取りは非常に有益です。

当事者からの聴き取りにより、それまでの調査では把握していなかった別の非違行為が明らかになることもあります。

もっとも、当事者への聴き取りは、その方法によっては過度の圧迫となり虚偽自白をさせてしまう可能性があるため、注意しなければなりません。

実際には、当事者の自白以外の証拠により非違行為を認定できるように証拠収集を行い、当事者の自白は補完的に検討するのが安全です。

なお、当事者への聴き取り以外の調査によって、非違行為を認定できる場合であっても、懲戒処分が制裁罰であり適正手続きが求められることから、就業規則等で懲戒対象者への聴取を行うと定めている場合には、懲戒対象者への聴取を必ず行わなければなりません(社内規程による弁明機会の付与)。

他方、就業規則等で弁明機会の付与を定めていない場合には、懲戒対象者への聴取を行わなかったからといって、そのことだけで直ちに懲戒処分が違法無効となるわけはありません。しかし、懲戒対象者からすると、会社が自分に弁明(反論)の機会を与えずに懲戒処分を決定すると、そのことだけで心情的に不満をいだきやすいです。また、懲戒処分の結論が懲戒対象者の予想より重かった場合(戒告と思っていたら出勤停止7日間だった等)は、懲戒対象者が「不意打ち」された気持ちになってしまい、紛争になる可能性が高まります(裁判またはユニオン団体交渉)。

そのため、多少時間と手間がかかっても、就業規則等で弁明機会付与を定めているか否かにかかわらず、懲戒対象者への聴取(弁明機会の付与)を行うことをお勧めします。

 ③ 懲戒処分の有無・内容を決定

上記①と②で調査して収集した証拠から、非違行為の存在が認められるか否かを検討します(事実認定)。

特に、当事者が非違行為の事実を否定したり、当事者と他の関係者の話が食い違っていたりした場合には、慎重に事実認定を行う必要があります。

懲戒処分の対象となる非違行為について事実認定を間違えると、被懲戒者の不満を招き紛争化しやすく、懲戒処分が無効となってしまう可能性もあります。そのため、この事実認定について、弁護士に助言を求めることも大切です。

また、非違行為の存在が認められる場合であっても、懲戒権の濫用とならないように注意しなければなりません。

労働契約法15条は、懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、懲戒権の濫用となり、懲戒処分は無効となると定めています。

ここで問題となるのは、非違行為に照らして懲戒処分の内容が相当といえるかということです(詳細は下記2で説明します。)。

④ 懲戒処分の実施(当事者へ告知)

懲戒処分を行うと決定した場合、当該社員に対して、懲戒処分の内容、懲戒処分の対象となる具体的な事実(非違行為)、適用される就業規則の懲戒規定等を告知します。

この告知は、書面を交付する方法で行うことが望ましいです。

⑤ 社内への公表

社員に対して懲戒処分を行った場合、再発防止や企業秩序の維持の観点から、懲戒処分の事実を社内に公表することもあります。

ただし、懲戒処分を受けた社員の名誉やプライバシーの保護も考慮する必要があります。懲戒対象行為がパワーハラスメントやセクシャルハラスメントの場合は、被害者のプライバシー保護も重要な問題になります。これらを考慮しないで社内公表をすると、会社が懲戒処分を受けた者や被害者から慰謝料を請求され実際に支払わなければならなくなるかもしれません。

そのため、当該社員の氏名や個人を特定しうる具体的な事実は公表しない方がよいと思われます。特にパワハラ、セクハラの懲戒処分の公表は十分に検討して判断する必要があります。特にセクハラ被害者が公表を望まない、公表はいやだ、という場合は、セクハラ被害者の希望に反してあえて公表することは紛争化のリスクが高く、公表すべきではないと考えます。このように公表は難しい問題ですので、どうか慎重にご対応ください。

2 懲戒処分を行う際は各企業の就業規則や前例が重要!

労働契約法15条や判例により、懲戒処分を行うためには懲戒処分の事由と種類を就業規則に定めておかなければならず、就業規則に定めていない懲戒処分を行うことはできません(懲戒処分が一種の制裁罰であることから、罪刑法定主義的な考え方が採用されています。)。

そのため、時代の変化に合わせて懲戒事由の追加を検討することが重要となります。

また、懲戒処分が懲戒権の濫用として無効とされないためにも、懲戒処分は社会通念上相当なものでなければなりません。

ここでいう社会通念上の相当性は、様々な要素が考慮されることになります。

例えば、上記1の手続きのうち当事者への弁明の機会や告知を行っていない場合は、社会通念上相当でないとして、懲戒処分が無効とされてしまいます。

また、非違行為の性質・態様と懲戒処分の重さの均衡を欠く懲戒処分や、当該会社における平等性を欠いた懲戒処分も、社会通念上相当でないとされてしまいます。そのため、当該会社における他の同一・同種の事案での処分(前例)と比較して重すぎないように懲戒処分を行わなければなりません。

このように、懲戒処分の有効性は、その会社の就業規則やそれまでの前例によるところがありますので、会社ごとに判断が分かれるものです。

とはいえ、一般的には、非違行為の悪質性の程度、非違行為の期間、被害を受けた者の人数、会社に与えた損害(額)、初犯か再犯か、社内の風紀に与える影響、会社の対外的な信用に与える影響、故意か過失かなどを考慮して決めることとなり、あまりに標準から外れた懲戒を行うことは慎重であるべきです(下記4を参照。)。

3 懲戒処分の種類と注意点は?

懲戒処分の種類は、就業規則によって各企業が定めることができますが、基本的なものは共通しております。

ここでは、諭旨解雇と懲戒解雇を除いた、懲戒処分として比較的軽いものを取り上げます。

① 戒告・譴責(けんせき)

戒告とは、将来を戒めるが始末書の提出を求めない処分をいい、譴責とは、始末書を提出させて将来を戒める処分をいいます。

両者が混同していたり、区別されていなかったりする企業もありますが、正確な定義は上記のものです。

なお、非違行為の存在が認められる場合であっても、戒告にも至らない「事実上の注意」を行うこともあります(これは、懲戒処分ではありません。)。

しかし、事実上の注意しか受けていない社員が新たに非違行為をした場合に、それまでの非違行為も考慮していきなり重い懲戒処分をすると、非違行為と懲戒処分の均衡を欠くことや懲戒処分を受けないという社員の合理的な期待を侵害して信義則に反することから、社会通念上相当でないとして懲戒処分が無効とされてしまう可能性があります。

そのため、戒告や譴責が相当である場合には、きちんと懲戒処分として戒告・譴責をすることが大切です。

② 減給

減給とは、制裁として賃金から一定額を差し引く処分のことをいいます。

減給は、社員の生活のための賃金を減額するものですので、減給できる金額の上限が法律で定められています(労働基準法91条)。

同条項では、1回の非違行為に対しては、平均賃金の1日分の半額を超えて減給することはできず、複数回の非違行為に対しては、一支払期間における賃金総額の10分の1を超えて減給することはできないこととされています。

懲戒処分として減給する場合には、この上限規制に反しない範囲で行わなければなりません。

③ 降格

降格とは、役職、職位、職能資格等を引き下げる処分のことをいいます。

懲戒処分としての降格以外にも、人事権行使としての降格もあり、両者は区別する必要があります。

また、賃金が職位等により定められている会社(職能資格給制度や職務等級制度等を採用している会社)において降格処分を行うと、当然に賃金が下がりますが、これは懲戒処分としての減給ではありません。しかし、賃金が職位等と連動していない会社において、降格に伴い減給する場合には、懲戒処分としての減給と降格をそれぞれ行ったと評価され、1回の懲戒処分で二重処罰(2つの処分)をしたとして違法になる可能性があります。

④ 出勤停止

出勤停止とは、労働契約関係を維持しながら、労働者の就労を一定期間禁止する処分のことをいいます。

出勤停止期間中の賃金は、就業規則等の定めによりますが、無給かつ勤続年数に算入しないと定める企業が多いと思われます。

4 懲戒処分の相場はありますか?

これまで見てきたとおり、懲戒処分の有効性は各企業によって変わってきます(上記2を参照。)。

そのため、ある非違行為に対してどの懲戒処分であれば有効かを確定的に判断することはできません。

しかし、これまでの裁判例や現在の社会情勢などを踏まえれば、一般的な傾向が見えてきます。

あくまで参考として、具体的な非違行為に対する懲戒処分の相場を示します。

  ① 無断欠勤

    短期間であれば、戒告・譴責。

    約1か月にも及ぶ場合には、懲戒解雇の可能性もあります。

  ② 社内での暴言

    単発的な暴言は、戒告・譴責。

    継続的なものや悪質性の高い暴言であれば、減給。

  ③ 社内での暴行

    被害者に怪我がない場合には、戒告・譴責~減給。

    打撲傷などの怪我がある場合には、減給~出勤停止。

  ④ セクハラ

    軽度かつ単発的なセクハラは、戒告・譴責~減給。

    繰り返したり、悪質性の高いセクハラは、減給~懲戒解雇。

    強制わいせつとなるセクハラは、懲戒解雇。

  ⑤ 社内での横領や窃盗

    金額や期間にもよりますが、原則として懲戒解雇。

5 懲戒処分でお悩みの経営者様は当事務所にご相談ください!

吉田総合法律事務所では、懲戒処分でお悩みの経営者様のご相談にご対応いたします。適法な懲戒処分となるよう進めて紛争を予防するだけでなく、経営者様の心境を深く理解してサポートすることにより、非違行為の再発防止や企業秩序の回復・維持に貢献いたします。

当事務所では、懲戒処分は非違行為をした社員を懲らしめること自体を目的とするものではないと考えています。

中には、とても悪質な非違行為をしたために懲戒解雇をせざるを得ないこともありますが、多くは懲戒処分を受けた社員がその後も企業に所属し続けることになります。

そのため、懲戒処分は、非違行為の悪質性を社員に認識させて、かつ、社内にも周知することで、企業秩序を回復・維持・向上させることを目的として行うべきです。

このような視点で懲戒処分の手続きを進めていけば、結果的に紛争化するリスクも低減することにつながります。

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