取締役会開催の手続きとは?取締役会の法的リスクへの対処方法

【目次】

1 取締役会とは?取締役会の職務とは?
2 どのような場合に取締役会を開催しなければならないのでしょうか?
3 取締役会を適切に開催しない場合、どのような法的リスクがあるのですか?
4 取締役会の手続きの流れとは?
5 お困りの方は吉田総合法律事務所の弁護士へご相談ください

1 取締役会とは?取締役会の職務とは?

中小企業であっても、取締役会を設置している会社が多いと思われます。

これは、取締役会を設置していない株式会社(取締役会非設置会社)では、会社の意思決定(経営判断)は株主総会で行わなければならず、迅速な意思決定(経営判断)を行うことができなくなるということが理由に挙げられます。

他方、株主がごく少数で、株主と取締役(経営者)が同じメンバーであるような場合には、株主による迅速な意思決定(経営判断)を行うことも可能ですので、取締役会を設置しない株式会社も存在します。

取締役会を設置した株式会社(取締役会設置会社)では、原則として会社の根幹に関わる重要事項のみ株主総会で決議することとし、それ以外の事項については取締役会で決議することができることとされています。

そして、取締役会の職務は、①業務執行の決定②取締役の職務執行の監督、③代表取締役の選定及び解職です(会社法第362条2項)。

すなわち、取締役会で業務執行の内容や方針等を決定し(①)、これに基づき各取締役が行った職務執行を取締役会が監督する(②)ということになります。

2 どのような場合に取締役会を開催しなければならないのでしょうか?

  

まず、株主総会の招集は、取締役会の決議によらなければなりません(会社法第298条4項)。そのため、定時株主総会や臨時株主総会を招集する際に、取締役会を開催する必要があります。

次に、以下の事項については取締役に委任することができないとされているため、取締役会を開催して決議を行わなければなりません(会社法第362条4項各号)。

1号重要な財産の処分及び譲受け
2号多額の借財
3号支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
4号支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
5号社債に関する事項
6号内部統制に関する事項
7号役員等の責任の免除に関する事項
柱書その他の重要な業務執行の決定

上記事項以外にも、取締役の競業取引や利益相反取引の承認(会社法第365条、第356条)や、計算書類・事業報告書の承認等も取締役会の決議事項とされていますので(会社法第436条3項)、このような場合にも取締役会を開催しなければなりません。

また、取締役会の職務の一つである、②取締役の職務執行の監督との関係から、代表取締役等の業務執行を行う取締役は3か月に1回以上の頻度で職務執行の状況を取締役会に報告しなければなりません(会社法第363条2項)。そのため、中小企業であっても、3か月に1回は取締役会を開催しなければならないことになります。

この点はあまり意識されておらず、定時株主総会を招集するために年に一度だけ取締役会を開催している会社も少なくないように思います。しかし、後記のとおり、3か月に1回以上取締役会を開催していない場合には、役員責任を追及されてしまう原因にもなりかねず、法的なリスクを抱えていることになります。

3 取締役会を適切に開催しない場合、どのような法的リスクがあるのですか?

上場会社を除く中小企業においては、株主や取締役等の関係者の間で対立関係がなければ、取締役会を適切に開催していないことを問題とする人は通常はいないと考えられます。そのため、このような場合には、取締役会を適切に開催していなくとも、法的なトラブルに発展することはあまりありません。

しかし、会社の経営権(支配権)争いなど、株主や取締役との間で対立関係が生じてしまっている場合には、適切に取締役会を開催していないことを根拠として法的紛争に発展してしまうことがあります。

例えば、取締役会の決議事項とされている「多額の借財」(上記2参照)を取締役会の決議を経ずに行った場合、多額の借財を行った代表取締役に対し少数株主が株主代表訴訟を提起して責任追及を行うということがあり得ます(会社法第847条、第423条1項)。

また、取締役会の決議を経ずに株主総会を招集した場合、その株主総会の決議は決議取消の訴えにより取り消されてしまう可能性があります(会社法第831条1項1号)。

このように、取締役会を適切に開催しない場合、裁判闘争に発展してしまう可能性があり、法的リスクが高まってしまいます。

そのため、取締役会を適切に開催して、法的リスクを生じさせないようにする必要があります。

なお、役員が損害賠償責任を負うのは、任務懈怠により会社に損害が生じた場合であり、任務懈怠があったとしても損害が生じなければ、理論上は損害賠償責任を負わないということになります。そのため、3か月に1回以上取締役会を開催していなかったとしても、それにより会社に損害が生じていなければ、役員は損害賠償責任を負わないということになります。しかし損害が発生していない場合であっても、取締役としての義務を怠っている(義務違反状態)ことは明白ですし、損害発生時には損賠賠償「責任」が生じることになります。従って、取締役には義務をしっかりと遵守していただくことが重要になります。

4 取締役会の手続きの流れとは?

原則的な取締役会の手続きの流れは、以下のとおりです。

⑴ 招集通知の発送

取締役会の日の1週間前(これを下回る期間を定款で定めた場合にはその期間)までに、招集しようとする取締役が各取締役及び各監査役に招集通知を発送します(会社法第368条1項)。

なお、株主総会の場合と異なり、取締役会の招集通知には開催日時と開催場所を記載すれば良く、議題や議案を記載する必要はありません。

また、書面で行う必要もなく、メールや電話、口頭で通知しても良いとされています。もっとも、招集通知を発送したことを記録化しておくという観点からは、書面またはメールで行うことをお勧めしております。

⑵ 取締役会の開催

取締役会の定足数は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にはその割合以上)です。

そして、取締役会の決議は、出席した取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にはその割合以上)によって行われます(会社法第369条1項)。

なお、決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができませんので(会社法第369条2項)、定足数の母数からも除外されます。

⑶ 取締役会議事録の作成

取締役会を開催した場合、その議事について議事録を作成して、出席した取締役及び出席した監査役の署名又は記名押印をしなければなりません(会社法第369条3項)。

そして、取締役会の日から10年間、取締役会議事録を本店に備え置かなければなりません(会社法第371条1項)。

なお、本店に備え置かれた取締役会議事録は、株主が権利行使するために必要があるときに、いつでも閲覧・謄写を請求することができます(会社法第371条2項。もっとも、監査役設置会社等では裁判所の許可を得なければなりません(会社法第371条3項)。)。

5 お困りの方は吉田総合法律事務所の弁護士へご相談ください

取締役会は、通常業務を行う上ではそれほど影響のあるものではありません。

しかし、株主や取締役との間で対立関係が生じてしまった場合には、法的紛争に発展する根拠を与えることになってしまうことがあります。

そのようなことを防止するためにも、適切に取締役会を開催して法的リスクを生じさせないことが重要です。

吉田総合法律事務所の弁護士は、取締役会の開催・実施についても法的サポートを行っています。招集通知や取締役会議事録の作成、スケジュールの提案・管理、開催の要否に関するアドバイスなど、企業の具体的事情に合わせた法的サポートを提供しています。

取締役会についてお困りの企業、経営者の方は、吉田総合法律事務所へご相談ください。

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