逆パワーハラスメント(逆パワハラ)とは?

【目次】
1 逆パワハラの定義とは?
2 逆パワハラの具体例とは?
3 逆パワハラによりメンタルヘルス問題が発生した場合の法的責任とは?
4 逆パワハラが発生してしまった場合の対処法とは?
5 逆パワハラでお困りの企業は吉田総合法律事務所へご相談ください

1 逆パワハラの定義とは?

逆パワーハラスメント(以下、「逆パワハラ」といいます。)とは、一般的に、部下による上司へのパワーハラスメント(以下、「パワハラ」といいます。)をいいます。

パワハラというと、会社の社長が社員に対して行うもの、部長などの上司が部下に対して行うものをイメージすることが多いと思われます。

しかし、部下が上司に対してパワハラを行うことも、実際に発生しています。この点、パワハラの定義や要件は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法またはパワハラ防止法)第30条の2第1項やこの法律を受けた厚生労働省の指針(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)で定められています。
このパワハラ防止法や厚労省の指針でも、明確に、逆パワハラをパワハラの一つと位置付けています。

すなわち、職務上の地位が上位でない場合であっても、①業務上必要な知識や豊富な経験を有していて、協力を得られなければ円滑な遂行を行うことが困難な場合や、②集団での行為であることによって、抵抗又は拒絶することが困難な場合には、パワハラの要件である「優越的な関係」に該当すると明確に定められています(指針2⑷)。

なお、上記①や②は、あくまで例示として定められているものですので、これらに該当しないものであっても、優越的な関係と認められることがありますので、ご注意ください。

パワハラ防止法や厚労省の指針の詳細については、こちらの記事をご覧ください。

2 逆パワハラの具体例とは?

それでは、逆パワハラの具体例はどのようなものでしょうか。

上記1で触れた厚労省の指針の例からしますと、例えば、他部署から配置転換された部長に対して、部下が業務内容や作業状況を報告・共有しないことや、取引先とのメールのccから外してしまうことは、逆パワハラに当たる可能性が高いといえます。

他部署から配置転換された部長であれば、その部署の業務についての知識等は部下の方が良く知っているため、部下の方が優越的な関係にあるといえます。

そして、業務内容等を報告・共有しないことやメールのccから外すことは、通常は業務に支障が生じるものであり、また、これらをされた上司は精神的なダメージを受けてしまうことになります。

そのため、逆パワハラに該当する可能性が高いといえます。

また、上司の指示に部下が従わなかったり上司の指示に反発したりすることも、逆パワハラに該当することがあります。

上司の指示が不適切であれば別ですが、適切で必要な指示であるにもかかわらず従わないといった場合には、逆パワハラに該当する可能性があります。

もっとも、逆パワハラというためには、優越的な関係で行われることが必要です。

そのため、複数人の部下により集団で行われたりした場合や、部下が豊富な知識や経験を有している場合などに、逆パワハラに該当することになります。

他方、部下の一人だけが指示に従わないような場合には、単なる業務命令違反となるにとどまり、逆パワハラとまではいえないこともあります。

いずれの具体例も、部下が問題社員であるという形で弁護士に相談がくることがあります。

また、上司がうつ病等のメンタルヘルス不調となり休職することとなったという形で弁護士に相談が来ることもあります。

しかし、実際に話を聞いてみると、逆パワハラが行われていることが明らかになることがあります。特に後者の場合には、上司が立場上相談することをためらってしまい、事態が深刻化してから周りが気付くことも少なくありません。

逆パワハラに該当する場合には、適切に対応しなければ、労働災害が発生してしまったり、安全配慮義務違反として損害賠償請求を受けてしまったりするリスクがあります。

そのため、上記の具体例のようなことが生じた場合には、逆パワハラかもしれないと考えることが安全です。

3 逆パワハラによりメンタルヘルス問題が発生した場合の法的責任とは?

  

逆パワハラにより上司がメンタルヘルス不調となってしまった場合、逆パワハラを行った部下(行為者)は、上司(被害者)に対して、不法行為責任としての損害賠償責任を負います。

また、メンタルヘルス不調は業務上生じたものですので、労働災害であり、上司は労災保険給付を受けることができます。

さらに、会社は、従業員に対して雇用契約上の安全配慮義務を負っていますので、安全配慮義務違反(債務不履行)としての損害賠償責任を負うことになります。

以上の法的責任を図でまとめると、以下のようになります。

なお、メンタルヘルス不調の社員への対応については、こちらの記事もご覧ください。

4 逆パワハラが発生してしまった場合の対処法とは?

基本的に、パワハラが発生した時と同じように対応することが考えられます。

まずは、社内調査を行い、事実を確認します。

その際には、文書やメール、SNS、録音データなどの客観的証拠の収集と、当事者や関係者へのヒアリングを行うことが一般的です。

社内調査により逆パワハラの事実が確認できた場合には、行為者(部下)に対して注意・指導懲戒処分解雇などを検討することになります。

何をどこまでやるかについては、逆パワハラの内容等を考慮して検討します。

また、今後の逆パワハラを防止するためには、行為者(部下)を配置転換して両者を(物理的に)離すことも有効です。配置転換をして両者を離してしまえば、行為者(部下)がわざわざ逆パワハラをしに行くことは考え難いためです。

もっとも、逆パワハラが疑われる事案では、単に逆パワハラに該当するだけでなく、業務命令違反等にも該当する場合が多いと思われます。

また、逆パワハラとまではいえない場合であっても、業務命令違反等には該当することもあり得ます。

そのため、逆パワハラとしての対応だけを考えるのではなく、業務命令違反等のいわゆる職務規律違反として、指導や懲戒処分の対象となり得ます。

なお、逆パワハラが疑われる事案への対応が遅れると、逆パワハラを受けた上司がメンタルヘルス不調となり労働災害に発展したり、逆パワハラを受けた上司から安全配慮義務違反として損害賠償請求されたりしてしまうリスクがあります。

そのため、逆パワハラを受けたという申告があったり、第三者からの内部通報があったりした場合には、速やかに対応することが求められます。

以上のことを図にまとめると、以下のようになります。

なお、パワハラ事案における社内調査・ヒアリングの方法については、こちらの記事をご覧ください。

5 逆パワハラでお困りの企業は吉田総合法律事務所へご相談ください

パワハラ防止法の改正により、パワハラ問題に対応できる弁護士は増えています。

もっとも、逆パワハラの対応経験が豊富な弁護士は、まだまだ多くないように思います。

吉田総合法律事務所の弁護士は、パワハラ問題はもちろん、逆パワハラの問題についても、企業からご相談を受けて対応しております。

また、逆パワハラの事案は、問題社員問題やメンタルヘルス不調としての労災の問題、休職復職の問題など、様々な問題が同時多発的に発生することがあります。その場合に適切に対応するためには、弁護士のサポートを受けることが大切です。

逆パワハラでお困りの企業様は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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