株主名簿とは?株主リストとの違いとは?

【目次】
1 株主名簿を作成していますか?
2 「株主名簿」には何を記載するのですか?
3 株主名簿と株主リストとの違いとは?
4 株主名簿を作成していないことのペナルティとは?
5 なぜ株主名簿を作成しなければならないのですか?
6 株主名簿でお困りの方は吉田総合法律事務所にご相談を

1 株主名簿を作成していますか?

皆様の会社は、株主名簿を作成していますか。

この質問をすると、ほとんど全ての方が「もちろん作成しています。」という回答が返ってきます。

しかし、実際に作成している株主名簿を確認すると、会社法第121条が定める「株主名簿」の要件を満たしていないことが少なくありません。

作成した株主名簿が会社法の要件を満たしていないと、M&Aや事業承継の時に重大な問題となったり、経営権(支配権)争いの火種になったりしてしまうかもしれません。また、過料が課されてしまう可能性もあります。

このようなリスクを回避するために、適法な「株主名簿」を作成しておくことが大切です。

2 「株主名簿」には何を記載するのですか?

まず、会社法における「株主名簿」の要件を見ていきます。

会社法は、「株主名簿」について、以下の事項を記載しなければならないと定めています。

  • ① 株主の氏名・名称及び住所
  • ② 各株主の有する株式の数
  • ③ 各株主が株式を取得した日
  • ④ 株券の番号(株券発行会社が株券を発行している場合)
  • ⑤ 質権の登録(質権の設定がある場合。会社法第148条)
  • ⑥ 信託財産の表示(会社法第154条の2)
  • ⑦ 振替株式につき主務省令で定める事項(社債株式振替法第152条1項、第151条1項)

3 株主名簿と株主リストとの違いとは?

会社に対し「株主名簿はありますか。」と質問すると、現時点での株主の名前や住所、持株数が記載された一覧表(以下、「株主リスト」といいます。)が出てくることが良くあります。

この株主リストは、定時株主総会の事業報告書に記載されていたりもします。

多くの会社では、この株主リストを株主名簿と呼んでおり、「ウチの会社は株主名簿をきちんと作成している。」と認識されていることがありますが、これは大きな誤解です。

確かに、株主リストは現時点での株主の構成が分かるものではありますが、会社法の「株主名簿」ではありません

上記2で記載したとおり、「株主名簿」には、③各株主が株式を取得した日を記載しなければならないと定められておりますので、過去の株式の移動を全て記載しなければなりません。

例えば、今から10年前に100株を取得した株主Aが、5年前にさらに100株を取得した場合には、株主名簿にはそれぞれの取得日を記載しなければならないということになります。

これに対し、株主Aが200株を保有していることのみを記載し、各取得日を記載していないものは、株主リストとしての実務上意味はありますが、会社法の求める「株主名簿」ではありません。

会社法が定める「株主名簿」と株主リストは、法的には別物なので、区別しなければなりません。

4 株主名簿を作成していないことのペナルティとは?

会社法が定める「株主名簿」を作成していない場合、取締役や監査役等の役員は100万円以下の過料の対象となります(会社法第976条7号)。

株主リストしか作成していない場合にも、会社法が定める「株主名簿」を作成していないことになりますので、100万円以下の過料が課されてしまう可能性があります。

また、「株主名簿」を作成することは取締役の職務ですので(会社法第121条)、「株主名簿」を作成しないと、取締役の善管注意義務違反となってしまいます。

株主や会社債権者には、株主名簿の閲覧や謄写を請求する権利がありますので(会社法第125条1項)、会社の経営権(支配権)争いが生じた場合には、少数株主権として株主名簿閲覧請求がなされ、「株主名簿」を作成していないことについて現経営陣に対し責任追及されてしまうリスクも生じてしまいます。

これらのリスクを回避するためにも、「株主名簿」を作成しておく必要があります。

5 なぜ株主名簿を作成しなければならないのですか?

「株主名簿」を作成する理由は、過料の対象であることや役員の損害賠償責任となること以外にもあります。

「株主名簿」は、過去の株式の移動を全て記載するものですので、「株主名簿」を見ることで、会社設立から現在に至るまでの全ての株式の移動を把握することができます。

このことを逆から見ると、「株主名簿」を作成していない場合には、過去の株式の移動を確認することができない可能性があることを意味します。

過去の株式の移動を確認できないと、現在株主として扱っている個人や法人が本当に株主であるか(株主としての権利を持っているか)を確認できないことになってしまいます。

この場合、後に、本当の株主を名乗る人物が現れてしまうと、それまでに行っていた株主総会の決議の適法性に問題が生じてしまうかもしれません。

また、このようなリスクがある場合には、M&Aで売却する際に売却金額が低くなってしまったり、買い手が見つからなかったりすることも考えられます。

このように、「株主名簿」を作成していないことは、重大な問題に発展するリスクを抱えることになります。

6 株主名簿でお困りの方は吉田総合法律事務所にご相談を

非上場会社の中小企業や中堅企業、特に同族会社では、株主リストしか作成しておらず、「株主名簿」がないことも少なくありません。

しかし、「株主名簿」がないことは、経営権争いでの攻撃手段となったり、M&Aで減額原因となってしまったりと、重大な問題に発展してしまうリスクがあります。

このようなリスクを回避するためにも、弁護士に依頼して会社法が求める要件を満たす「株主名簿」を作成する必要があります。

株主名簿でお困りの方は、吉田総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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