契約書チェック・契約書レビューというと、契約書の一つ一つの条項を確認するというイメージを持たれているかと思います。
当然、契約書チェック・契約書レビューは、その作業がメインとなります。
もっとも、契約書の記載自体には問題がなくとも、その契約書で行おうとしている取引に法的問題(リーガルリスク)が潜んでいることがあります。
そのまま契約を締結してしまい、実際に取引を開始したところ、潜んでいたリーガルリスクが発生(顕在化)してしまうと、企業に大きな損害やレピュテーションリスクが生じかもしれません。
そのため、ビジネスを安全に行うためには、契約書について、文言のチェックはもちろん大事ですが、それだけにとどまらず、契約書で行おうとしている取引自体の合法性・違法性のリーガルチェックも大事になります。特に他社が行っていない新サービスや独自性のある自社だけのサービスをプランニングしているときは、取引自体の検討も怠りなく行ってください。
そこで、吉田総合法律事務所が行っている、取引自体のリーガルチェックをご説明いたします。
【目次】 1 契約書で行おうとしている取引自体に法的問題(違法性)がないかをチェックしてもらえますか? 2 取引自体のリーガルチェックはどのように行うのですか? ⑴ 行政庁の指針や通達等を確認します! ⑵ 行政庁に直接問い合わせることもできます! 3 取引自体のリーガルチェックも吉田総合法律事務所にご相談ください。 |
1 契約書で行おうとしている取引自体に法的問題(違法性)がないかをチェックしてもらえますか?
弁護士による契約書チェック・契約書レビュー(契約書のリーガルチェック)というと、契約書の一つ一つの条項に法的なリスクがないかを確認(チェック)していくことをイメージされると思います。
当事務所でも契約書チェックを依頼された場合には、基本的には、一つ一つの条項に法的なリスクがないかをチェックしております。
他方で、この契約書で行おうとしている取引に法的問題がないか、すなわち、取引が特定の法律に違反する可能性はないかということの確認(取引自体のリーガルチェック)を依頼されることもあります。
このようなご依頼にも当事務所は対応しております。
ご相談の中には、特定の法律に違反しないかというご相談だけでなく、取引全体に違法性がないかという広範なご相談もあります。このような広範なご相談の場合には、時間をかけて、違反する法令がないかをチェックしていくことになります。また、法令の見落としを回避するために、2名以上によるダブルチェックを行うことも重要となります。
2 取引自体のリーガルチェックはどのように行うのですか?
⑴ 行政庁の指針や通達等を確認します!
ある取引が特定の法律に違反する可能性がないかを確認するためには、まず、その特定の法律を確認することになります。
もっとも、日本の法律は、抽象的な文言が使用されており、法律を見ただけでは、その取引が該当するか否かが判断できないことも少なくありません。
この場合には、行政庁が指針や通達により、法律の解釈や適用事例等を解説していることがありますので、その指針や通達を確認します。
ある企業で取引の法律違反が問題となった場合には、他の企業でも同じような問題が生じて行政庁に相談していることもあります。また、法律の制定時に検討され、議論されていることもあります。
行政庁の指針や通達等は、これらのことを踏まえて作成・公表されるものです。
そのため、大抵の場合は、行政庁の指針や通達等を確認すれば、取引が法律に違反する可能性があるかを判断することができます。
例えば、メーカーが商品を卸業者に販売する際に、取引条件を設けようとすると、独占禁止法上の排他条件付取引(一般指定11項)や拘束条件付取引(一般指定12項)に該当してしまう可能性があります。
しかし、独占禁止法の条文を読んでも、今回の取引条件が独占禁止法に該当するのか否かは分かりません。
そこで、公正取引委員会が出している、「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」を確認していくことになります。
この指針では、どのような基準で独占禁止法違反が判断されているかということや、違反事例の具体例が記載されています。
この指針に従って、今回の取引条件が独占禁止法に該当してしまうのか否かを考えることになります。
なお、中小企業・中堅企業が気を付けるべき独占禁止法については、こちらの記事もご覧ください。
また、請負契約(業務委託契約)が労働者派遣法(労働者派遣の適切な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)の労働者派遣事業に該当してしまうと、いわゆる偽装請負として違法になってしまいます。
しかし、労働者派遣法を読んでも、どのような請負契約が労働者派遣に該当するかよく分かりません。
厚生労働省は、労働者派遣事業に該当するか否かの基準について告示を出しておりますので、この告示を確認して労働者派遣事業に該当するか否かを検討することになります。
⑵ 行政庁に直接問い合わせることもできます!
行政庁の指針や通達等を確認することで、ほとんどの場合には、ある取引が特定の法律に違反する可能性があるか否かを判断することができます。
しかし、特に新しく制定された法律の場合等では、指針や通達等を確認しても、判断が難しいことがあります。
また、重要な取引であるために、法律に違反しないことを明確にしておきたいと企業が希望することもあります。
このような場合には、行政庁の窓口に、直接問い合わせることになります。
行政庁への問合せは、誰でも行うことができますが、弁護士が問合せ内容を事前に整理して問い合わせることによって、より適切な回答を得られます。
また、依頼者である企業の名前を行政庁に伝える必要はありませんので、弁護士からの問合せであれば、匿名で問い合わせることができます。
例えば、近年頻繁に改正されている消費者保護法や不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)については、消費者庁がホームページで詳細なパンフレットなどの資料を公表しておりますが、これらの資料では解消できない疑問について、直接消費者庁に問い合わせることができます。
なお、行政庁は、問合せに対して法律の解釈方法等を回答することしかできませんので、「法律に違反する」とか「法律に違反しない」とかといった企業が期待する回答が必ず得られるわけではないことにご注意ください。
このような明確な回答を得る場合には、法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)やグレーゾーン解消制度を利用することになりますが、企業名や照会内容、回答内容が公表されてしまうため、利用できる場面が限られてしまいます。
3 取引自体のリーガルチェックも吉田総合法律事務所にご相談ください。
契約書チェック・レビューは、契約書の条項を確認するだけというイメージがあります。実際に多くの法律事務所では、契約書のリーガルチェックといえば、契約書の文言だけを対象に、形式的に短時間で済ますことが通例のようです。
しかし、真の目的はビジネスを安全に行い正当な利益を得ることですから、契約書で行おうとしている取引自体のリーガルチェックは不可欠のはずです。
契約書を作成するまでの交渉段階で、(無意識的に)取引自体のリーガルチェックを行っているかもしれません。
しかし、交渉段階での取引自体のリーガルチェックが不十分な場合には、契約書の文言だけでみれば一見して違法性がないように見えても、取引開始後に違法性が顕在化し、そのビジネスが中止になり、多大な損失が生じるかもしれません。そのようなことはあってはなりません。
このようなことを回避するためにも、契約書の文言上のリーガルチェックに加えて(多くの事務所はここだけ)、取引自体のリーガルチェックも非常に重要です。今回はそのことをご説明するために、このようなテーマで記事を作成しました。
吉田総合法律事務所の弁護士は、顧問企業様からの取引自体のリーガルチェックのご依頼にも対応しております。
取引自体のリーガルチェックをご希望の企業様は、吉田総合法律事務所にご相談ください。
なお、当事務所の契約書業務の考え方については、こちらの記事もご覧ください。