取締役会の招集通知は監査役にも発送する?監査役は取締役会の出席義務はある?~非上場の中小企業を対象に~

【目次】
1 取締役会と監査役との関係とは?
2 取締役会の招集通知や取締役会への出席義務について(業務監査権限のある監査役の場合)
3 会計監査限定監査役の場合について
4 取締役会と監査役との関係についてお困りの方は吉田総合法律事務所の弁護士へご相談ください

1 取締役会と監査役との関係とは?

取締役会の開催や、取締役会議事録の作成についてお問合せをいただくことが良くありますが、その際に監査役のことを意識されていないことがあります。

非上場の中小企業では、監査役は会計事務所顧問税理士等、会社外の方に就任していただいていることなどの理由により、監査役には定時取締役会にのみ出席してもらっているというのが実情なのかもしれません。

しかし、後記のとおり、監査役にも取締役会の招集通知を発送しなければならず、また、監査役には取締役会に出席する義務があります。

これらを怠ってしまうと、取締役会決議に瑕疵が生じてしまうなど、会社経営に影響が生じうる法的リスクが発生してしまう可能性があります。

そこで、本記事では、取締役会における監査役について解説します。

2 取締役会の招集通知や取締役会への出席義務について(業務監査権限のある監査役の場合)

取締役会は、株主総会と同様に、原則として一定期間前に招集通知を発送しなければなりません(会社法第368条1項)。

この招集通知は、各取締役だけでなく、各監査役に対しても発送しなければならないとされています(会社法第368条2項)。

これは、監査役は、取締役の職務執行を監督すること(業務監査)が職務であり(会社法第381条1項)、取締役による不正行為等のおそれがある場合には取締役会に報告しなければならないためです(会社法第382条)。

また、同様の理由から、監査役は取締役会へ出席する義務があります。(会社法第383条1項)。

取締役会に出席しても議決権はありませんが、議事に参加して意見を述べることができます。すなわち、取締役の職務執行を監督するという職務を全うするために、取締役会に出席して必要な意見を述べなければならないということになります。

なお、監査役が出席しなければ取締役会を開催することができないというわけではありません。監査役に取締役会の招集通知を発送すれば、監査役が欠席しても取締役会を開催することができます。

ちなみに、株主総会については、業務監査権限のある監査役であっても、何も問題がない場合の株主総会については、出席する義務はありません。とはいえ、株主総会は重要なセレモニーという意味合いもありますので、実務では何も問題がない株主総会であっても、監査役が出席することが慣例になっています。

他方で、もしも取締役が株主総会へ提出しようとする議案や書類等について、監査役として違法・不当な事項があると判断した場合には、株主総会に出席し、株主に対し報告する法的義務があります((会社法第384条)。

3 会計監査限定監査役の場合について

上記2が原則になりますが、定款で監査役の監査範囲を会計に関するものに限定した場合(会計監査限定監査役)には(会社法第389条1項)、例外的に異なる扱いになります。

監査範囲を会計に関するものに限定された会計監査限定監査役は、業務監査は行いません。

そのため、会計監査限定監査役には取締役会の招集通知を発送する必要もなく、取締役会への出席義務もありません(会社法第389条7項)。

したがって、会計監査限定監査役としている会社では、取締役だけで取締役会を開催することができます。

なお、計算書類(いわゆる決算書)等は監査役の監査を受けなければならず(会社法第436条1項)、監査役の監査を受けた計算書類等は取締役会と株主総会の承認を受けることになります(会社法第438条2項)。

業務監査権限のある監査役の場合、取締役会への出席義務がありますので、計算書類等を承認する取締役会において、監査した結果を報告し、この監査役の報告を踏まえて取締役会で承認するということが実務で行われることがあります。

しかし、会計監査限定監査役の場合には、取締役会への出席義務はありませんので、法律的には監査役が取締役会に出席する義務はありません。とはいえ、会計監査限定監査役にとっても計算書類を承認する取締役会は心情として非常に重要です。そこで、実務では会計監査限定監査役であっても計算書類承認の取締役会には開催を連絡し、取締役会に出席してもらう場合もあります。しかし、会社法の理解としては上記のとおりです。

会計監査限定監査役の株主総会出席についても、業務監査権限のある監査役と同様に、法律的には、会計監査の中で何も問題がない株主総会については、出席する義務はありません。とはいえ、株主総会は重要なセレモニーという意味合いもありますので、実務では何も問題がない株主総会であっても、監査役が出席することが慣例になっています。

他方で、会計監査限定監査役は、取締役が株主総会へ提出しようとする会計に関する議案や計算書類について調査し、その調査結果を株主総会に報告する法的義務があります(会社法第389条3項)。

4 取締役会と監査役との関係についてお困りの方は吉田総合法律事務所の弁護士へご相談ください

取締役会は株式会社の重要な機関ですが、株主総会と比べて、その手続きが軽視されているように感じることがあります。

しかし、株主や取締役との間で対立関係が生じてしまった場合、取締役会の手続きに落ち度があると、法的紛争に発展する根拠を与えることになってしまうことがあります。

そのようなことを防止するためにも、取締役会の適切な開催方法を検討し、法的リスクを生じさせないことが重要です(なお、取締役会の法的リスクについては、こちらの記事もご覧ください。)。

吉田総合法律事務所の弁護士は、取締役会の開催方法についても法的サポートを行っています。招集通知や取締役会議事録の作成、スケジュールの提案・管理、開催の要否に関するアドバイスなど、企業の具体的事情に合わせた法的サポートを提供しています。

取締役会と監査役との関係についてお困りの企業、経営者の方は、吉田総合法律事務所へご相談ください。

   

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