ビジネス契約書にはどのように対応すべきか

ビジネスを行う上では、契約を避けては通れません。

他社との取引を行う際には、合意を行ったうえで取引が開始することになります。

現代社会では私生活においても日々様々な契約が成立していますが、ビジネスにおける契約は、私生活における契約とは異なる視点で、注意しなければなりません。 そこで、ビジネスにおける契約への対応について、見ていきます。

【目次】
1 ビジネス契約書は必ず作成しなければならないのですか?
2 契約書はひな型を使用すれば問題ないですか?
3 信頼できる取引相手との契約だったので、よく確認せずに契約書を作成しましたが問題ありますか?
4 ビジネス契約書でお困りの方は、吉田総合法律事務所へご相談ください。

1 ビジネス契約書は必ず作成しなければならないのですか?

契約は、当事者間の合意があれば成立しますので、契約の成立という意味からすれば、契約書の作成は必須要件ではありません。

しかし、ビジネスの契約は、内容が複雑であることが多く、①第三者が読んでも理解できない部分、②双方で取扱いを未定にしている部分、③当事者間で認識がずれている部分が生じることがあります。

特に、創業当初から何十年にもわたって続いている取引の場合には、契約当初は契約書の必要性を認識していなかったり、自社にひどいことはしないだろうという思い込みがあったりしたために、契約書を作成していないことも少なくありません。

しかし、時代の変化や会社の経営状況の悪化により、義理人情より自社の数字(利益)を優先することが多くなります。また、取引当初の担当者がすでに退社していて、取引当初にどのような合意をしていたか確認することができないということにもなりかねません。

このような場合にはトラブルに発展してしまい、契約内容が法的に自社に不利であれば損害が発生してしまいます。さらに、大きな取引の場合には経営に甚大な影響を及ぼしてしまう可能性もあります。

このようなリスクを避けるためにも、取引を開始する際には契約書を作成しておくことが大切です。

2 契約書はひな型を使用すれば問題ないですか?

契約書を作成する際には、一から契約書を作成するのではなく、ひな型を使用することがあります。

確かに、ひな型を使用すれば、一から契約書を作成するのに比べて、作業時間を短縮することができます。また、インターネットや書籍で簡単に手に入りますので、ひな型はとても便利です。

しかし、全く同じ内容の取引について何度も契約することはまれであり、契約書のひな型の一部が対象の取引に合っていないことがあります(ひな型を安易に使用することのリスクについては、下記3③もご覧ください。)。

そのため、ひな型を使用する場合にも、ひな型をたたき台として、対象の取引内容に応じて修正していくことが必要になります。

3 信頼できる取引相手との契約だったので、よく確認せずに契約書を作成しましたが問題ありますか?

友好的な取引を長年継続している取引相手から契約書を提示された場合、取引相手を信頼して、特にチェックすることなく契約書にサインしてしまう気持ちも、分からなくはありません。

しかし、取引はビジネスであり、時代や経済状況の変化担当者の交代によって取引相手の態度が変わる可能性は否定できません。

そのような時に、こちら側に不利な契約書となってしまっていれば、取引も不利になり、会社に損害が発生してしまうかもしれません。

一方当事者に不利となり得る契約書というのは、例えば以下のようなことが考えられます。

① 契約条項の内容が、トラブルが発生した場合に一方が多大な損害を負担することになっていたり、取引上のリスクを一方のみが負うことになっていたりする場合

契約書の中には、一方当事者に契約違反があった場合に、他方当事者に対して損害賠償をしなければならないことを定める条項(損害賠償条項)があり、損害賠償の金額をあらかじめ定めておくことがあります(これを「賠償額の予定」といいます(民法第420条1項)。)。

通常は、当該契約違反により発生すると想定される損害をまかなえる程度の金額を賠償額の予定として定めますが、ビジネス契約書の中では、契約違反により発生すると想定される金額をはるかに超える金額が定められていることがあります。

このような条項を見過ごして契約書にサインしてしまうと、後で契約違反をしてしまった場合に、とんでもない金額の損害賠償請求を受けてしまうことになります。

賠償額の予定で定められた金額が、暴利といえるようなものであれば、公序良俗違反(民法第90条、なお令和2年(2020年)4月1日施行の民法改正で旧民法420条1項後段が削除されました。)として無効となる(または異なる賠償額の算定を行う)可能性はあります。しかし、実際はこの主張を裁判で認めてもらうことはかなり大変な作業になります。

このように、契約当事者は、仮に不当な内容であったとしても、契約書に記載されている内容に拘束されてしまいます。そのため、契約書にサインする前に、一方的に不利な内容となっていないかを確認しなければなりません。

なお、企業と個人の契約において、個人が一方的に不利な内容となっている場合には、消費者契約法第8条から第10条等により個人が保護される可能性があります。

しかし、これは、企業と消費者(個人)とでは持っている情報の質や量、交渉力に差があることから、消費者(個人)を法律で保護しようとするものです。

他方、裁判では、企業間取引は企業対消費者(個人)の取引のような保護を受けることは出来ません。実際は企業といっても保有する情報の質や量、交渉力に大きな差があることもまれではありませんが、消費者ではない(法律の保護はない)という点は非常に重要です。

そのため、企業においては、契約書の見落としは自己責任となってしまいます。

② 一応の条項が定められているものの、文言が不明確である場合

契約書は、今後の取引について作成するものであり、将来のことを完璧に予測することはできませんので、契約書に全ての事項を事細かに記載することは現実的ではありません。

そのため、ある程度抽象的な文言とならざるを得なかったり、むしろ抽象的な文言とすべきであったりすることもあります。

しかし、あまりにも不明確な文言で多義的に解釈できてしまう場合には、取引相手に文言を自己に有利に解釈されてしまうリスクがあります。

特に、取引相手が大企業でパワーバランスが傾いているような場合には、取引相手から強く主張されてしまうと、なかなか反論することができなくなってしまいます。

これに対して、契約書で一義的な文言となっていれば、取引相手が大企業であったとしても、その文言に拘束されますので、契約書の文言に反する主張はしにくくなります。

そのため、当該取引において特に重要な事項については、契約書で細かく規定して、多義的な解釈ができないようにする必要があります。

③ 取引の重要事項が契約書に定められていない場合

取引に合っていない契約書のひな型を使用してしまっているなどの場合には、当該取引の重要事項であるにもかかわらず、契約書に定めがないということも起こります。

このような場合には、民法や商法などの法律によって補完することができるかを検討することになりますが、特殊な取引については民法や商法などでも補完できないこともあります。

当事者間で改めて協議して合意できれば良いのですが、トラブル発生時などで利害が対立してしまっているような場合には、協議して合意することもできない可能性があります。

そうなると、適切な解決が図れずに、会社に損害が発生してしまうことにもなりかねません。

そのため、各取引における重要事項は、漏れなく契約書で定めておくことが大切です。

4 ビジネス契約書でお困りの方は、吉田総合法律事務所へご相談ください。

ビジネス契約書は扱う機会が少なくないことから、安易にサインしてしまいがちです。

しかし、上記で解説したとおり、注意すべき点が多々あり、会社経営に甚大な影響を及ぼすリスクが潜んでいます。

契約書は安易な気持ちで流し読みをしないでください。流し読みは危険です。

契約書の文言は、一語、一節、一文を細部まで気を抜かずに検討し、その積み重ね作業により「相手の真意は何だろう?落とし穴はないか?相手の戦略・戦術は何だろうか?」といったことまで考えながら読み込む姿勢が大事です。

このように、契約書のチェックには経験と知識が必要です。吉田総合法律事務所の弁護士は、日々ビジネス契約書の作成やチェックを行っており、知識も経験も豊富です(なお、弁護士が契約書をチェックする必要性についてはこちらの記事を、当事務所の契約書業務の基本方針についてはこちらの記事を、ご覧ください。)。

ビジネス契約書に不安を感じている方は、ぜひ吉田総合法律事務所へご相談ください。

   

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