1 問題役員とは?
近年、問題のある従業員(問題社員)への対応が注目されており、話題に上がることが多いと感じています。
他方、取締役等の役員についても、会社にとって扱いづらかったり、問題を起こしてしまい業務執行させられなくなったりすることがあります。このような役員を「問題役員」と呼ぶことにします。
このような問題役員が社内にいることによる会社のマイナス影響(不利益)は、その問題役員が担当している業務が滞ってしまうだけではありません。
滞ってしまった業務を他の役員や従業員がフォローしなければならなくなりますので、他の役員や従業員の負担が重くなってしまいます。また、フォローに回った他の役員や従業員が担当している業務も遅くなってしまうかもしれません。
さらには、問題役員の言動により会社内の空気が悪くなり(就業環境の悪化)、他の役員や従業員の士気が低下し、業績が悪化することもあります。
特に、問題役員の場合は会社の経営側の問題であり、従業員である問題社員の場合と比べて、会社の内外に与える影響が大きくなる傾向にあります。
そのため、問題役員については、経営に影響が出てしまう前に対処することが重要です。
もっとも、問題社員は雇用関係ですが、問題役員は委任関係であり、両者の対処方法は異なりますので、両者を区別して検討する必要があります。
なお、会社によっては「執行役員」という肩書の役職を置いていることがあります。
この執行役員は、会社法上の役員ではありません。また、会社と執行役員との関係は、雇用契約関係の場合と、委任契約関係の場合の2パターンがあり、どちらの関係であるかは契約の内容次第ということになります。そして、どちらの関係であるかによって、対応方法が異なることになります。もっとも、本記事では取締役ではない執行役員についてはこれ以上踏み込みません。
本記事では、問題役員について解説いたします。
問題社員への対処方法については、こちらの記事をご覧ください。
なお、本記事は、非上場の中小企業のなかでもオーナー株主や支配株主のいる会社、同族会社等を前提としています。上場会社の場合は、コーポレート・ガバナンスコード(日本取引所グループHP)などを踏まえたガバナンスが必要であり、本記事とは異なる対応となります。
2 問題役員の類型とは?
一口に問題役員といっても、様々な類型が存在します。そこで、いくつかの類型をご紹介いたします。
⑴ 言動に問題のある役員について
まず、問題社員の場合と同様のものとして、言動に問題がある役員がいます。
例えば、以下のような言動が挙げられます。
- ・部下にパワハラなどのハラスメント行為を行う
- ・取引先との癒着
- ・メンタルヘルス問題を抱えている
- ・能力不足
- ・私生活上の問題を抱えている
問題社員の場合には、指導や懲戒処分を行って改善させることになりますが、役員には就業規則の適用がなく、懲戒処分の対象ではありませんので、役員に対して懲戒処分を行うことはできません。
そのため、代表取締役社長等が指導を行うか、下記4の方法で対応することが考えられます。
⑵ 経営上好ましくない役員について
問題役員の中には、代表取締役社長や取締役会の多数派とは意見が異なり対立してしまったために、経営上好ましくない役員も存在します。
このような役員は、法律や社内規程等のルールに違反しているわけではありませんので、経営方針の合う会社に移れば、むしろ力を発揮することもあります。
しかし、その会社では意見が対立してしまっているために、経営者にとって扱いづらくなってしまっているという役員です。
この類型の問題役員に対しては、下記4の方法で対応することが考えられます。
3 非上場の中小企業で問題役員が出てきてしまう原因とは?
上場企業でも問題役員が発生することがありますが、非上場の中小企業では特有の原因によって問題役員が出てきてしまうことがあります。
非上場の中小企業に特有の原因の一つ目は、役員候補となる人材が限られている点です。
上場企業では、役員となる人材が比較的豊富ですので、候補者を会社の内外から何人か探してきて、その中から選択することができます。
しかし、非上場の中小企業では、外部から人を連れてくることは難しく、会社内から昇進により引き上げる場合であっても対象となる社員が限定されてしまいます。他方で、取締役会設置会社であれば、最低3人の取締役が必要となります。そのため、役員として不適任な人材だと承知していても、数合わせのために役員に選任せざるを得ないということが起こります。
非上場の中小企業に特有の原因の二つ目は、オーナー企業体質です。
非上場の中小企業では、創業者一族が経営しているオーナー企業が多いですが、オーナー企業は社内での力関係がはっきりしているという特徴があります。
力関係がはっきりしている状態が常態化していると、残念ながらパワハラが起こりやすい環境になってしまい、それが企業体質となってしまっていることがあります。
そのような企業では、役員がこれくらいのことは許されるだろうという甘い認識を持ってしまい、パワハラや不正行為等が起きやすくなります。
4 問題役員への対処方法とは?
上記2⑴のとおり、会社と役員の関係は委任契約であり、雇用契約である会社と社員との関係とは異なりますので、問題役員に対して就業規則に基づいて懲戒処分をすることはできません。
問題役員に対しては、代表取締役社長から注意や指導を行うことはあり得ますが、指導で改善しなかった場合には、他の方法を考えなければなりません。 そこで、問題役員に対する対処方法の一つが、問題役員に役員を辞めてもらうことです。
問題役員に辞めてもらう方法については、こちらの記事で解説しておりますのでご覧ください。
5 問題役員対応でお困りの方は吉田総合法律事務所へご相談ください
問題役員が出てきてしまうと、問題社員以上に会社経営全体にマイナスの影響が生じてしまいます。
問題社員の場合と比べて、経営上のリスクはとても高くて大きいといえます。
また、問題社員は労働関係法の分野ですが、問題役員は会社法の分野であり、労働法としての問題社員に適切に対応できる弁護士であっても、会社法としての問題役員にはほとんど対応できないといった事態もあるかもしれません。
そのため、問題役員への対応は、会社法に精通した弁護士からのサポートを受ける必要があります。
吉田総合法律事務所の弁護士は、非上場の中小、中堅企業を対象とした会社法を中心業務として注力しており、問題役員への対応についても多数の事例について法的サポートをしています。
問題役員への対応方法について、オーナー企業か、2代目企業か、支配株主のいない企業か、特定の取引先に売上が集中している企業か、従業員が多いか少ないか、などの各企業の実情に合ったものを検討して、ジャストフィットのプランニングとしてご提案いたします。
また、案件によっては、弁護士が代理人として問題役員と直接交渉することもあります。
企業の皆様のご要望をお聞きし、案件の解決に向けて活動いたします。
問題役員対応でお困りの企業、経営者の皆様は、吉田総合法律事務所へご相談ください。