
| 【目次】 1 下請法の改正法である中小受託取引適正化法(取適法)が令和8年1月1日に施行されました 2 中小受託取引適正化法(取適法)の適用があるか否かをチェック 3 適用がある取引の契約書や発注書等をチェック ⑴ 契約書や発注書等の有無について ⑵ 代金の支払期限は60日以内を厳守 ⑶ 手形払いは禁止 ⑷ 型の無償保管の禁止 ⑸ 契約書等のチェックも弁護士に相談を 4 代金額の協議の要請には誠実に対応 5 中小受託取引適正化法(取適法)にお困りの方は吉田総合法律事務所へご相談ください! |
1 下請法の改正法である中小受託取引適正化法(取適法)が令和8年1月1日に施行されました
令和7年5月に下請法(下請代金支払遅延等防止法)の改正法が成立し、中小企業受託取引適正化法(取適法)と名前を変えて令和8年1月1日に施行されました。
今回の改正では、適用対象が拡大されたり、禁止行為が追加されたりしておりますので、企業の対応は必須となっています。特に、従業員数による基準が新たに追加されたことにより、これまでは守られる側であった中小企業・中堅企業が、規制される場面も出てくる可能性があり、一定規模以上の中小企業・中堅企業は対応が急務となっています。
改正内容は多岐にわたりますので、本記事では企業が最初に対応すべき事項に絞って解説いたします。

改正内容の詳細につきましては、行政庁がパンフレットなどの資料を公表しておりますので、本記事をお読みいただいた後にご覧ください。
公正取引委員会のサイトはこちら です。
2 中小受託取引適正化法(取適法)の適用があるか否かをチェック
中小受託取引適正化法(取適法)への対応で第一に行うことは、企業が行っている各取引に中小受託取引適正化法が適用されるか否かをチェックすることです。
中小受託取引適正化法では、①取引の内容、②資本金要件または従業員数要件の2つを満たした場合に、適用があることとされております。
①について、改正前の下請法では、
製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、
の4種類としておりましたが、中小受託取引適正化法ではこの4種類に、
特定運送委託
が加えられ、適用対象となる取引が5種類となりました。
②について、改正前の下請法では、資本金要件のみとされておりましたが、従業員数要件が新たに追加されました。この資本金要件と従業員数要件の関係は、いずれかを満たせば中小受託取引適正化法の対象となるとされておりますので、注意が必要です。
また、従業員数要件を検討する場合には、取引の相手方の従業員数を確認する必要があります。しかし、資本金と異なり、従業員数は一般に公表されておりませんので、取引の相手方に直接確認しなければなりません。
公正取引委員会の見解では、見積依頼書等に従業員数の申告欄を設けるなどの方法で従業員数を確認することが提案されています。
もっとも、本来であれば従業員数要件を満たして中小受託取引適正化法が適用されるにもかかわらず、取引の相手方の申告が誤っていたために中小受託取引適正化法が適用されないと判断してしまった場合であっても、中小受託取引適正化法に違反することになり、公正取引委員会等から指導及び助言がなされることになります。この場合に、直ちに勧告等は行わないとはされていますが、企業にとってはリスクが伴うことになってしまいます。
そうしますと、中小受託取引適正化法が適用される可能性のある取引においては、リスクを回避するために、中小受託取引適正化法が適用されることを前提に契約条件を決定するなどの対応が安全といえます。
なお、この従業員数要件の対象となる「常時使用する従業員」には、正社員だけでなく契約社員やパートタイマ―、アルバイト、1か月を超えて引き続き使用される日雇い労働者、派遣社員等も含まれますので、注意が必要です。
また、中小受託取引適正化法が適用されるか否かは、業務を委託した時点で判断することになり、その後に従業員数が変動したとしても適用の有無に影響しないとされています。
そのため、従業員数の確認等も、契約締結時(製造委託等をした時点)に行うことになります。
もっとも、最初に基本契約を締結し、その後に個別契約を都度締結するような取引においては、個別契約の締結時に中小受託取引適正化法の適用の有無が判断されることになります。
そのため、最初の基本契約を締結するときに中小受託取引適正化法の適用の有無を確認するのではなく、個別契約を締結する都度、中小受託取引適正化法の適用の有無を確認しなければならないということになります。
このことからしますと、中小受託取引適正化法の施行日(令和8年1月1日)よりも前に締結した基本契約に基づき、施行日以降に締結する個別契約にも、中小受託取引適正化法が適用されることになります。このような契約は見落としてしまう可能性が高いものですので、特にご注意ください。
中小受託取引適正化法が適用されるか否かによって、その後の対応が大きく変わることになります。
また、①取引の内容が分かりにくかったり、②従業員数要件を確実に確認する方法がなかったりという事情が、中小受託取引適正化法の適用の有無のチェックを難しくしています。

そして、このチェックを間違えてしまいますと、中小受託取引適正化法に違反してしまう可能性が高くなってしまいます。
そのため、最初のチェックが最も重要であり、弁護士から助言を受けながらチェックしていくことが安全です。
3 適用がある取引の契約書や発注書等をチェック
上記2で中小受託取引適正化法(取適法)の適用があると判明した取引については、次に契約書や発注書等のチェックを行うことになります。
以下では、契約書や発注書等をチェックする際に特に注意すべき事項を解説します。
⑴ 契約書や発注書等の有無について
中小受託取引適正化法(取適法)4条は、発注内容(給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法)等を書面又は電子メールなどの電磁的方法により明示しなければならないと定めております。
そのため、発注内容等を明示した契約書や発注書等を作成しているかをチェックし、作成していない場合には直ちに作成して交付する必要があります。
なお、中小受託取引適正化法(取適法)は、契約書を作成することまでは求めておりませんので、発注書等に発注内容等を記載すれば足りることになります。
また、これらの契約書や発注書等は、取引が終了した後2年間保管することが義務付けられておりますので(法7条)、しっかりと保管しておく必要があります。
⑵ 代金の支払期限は60日以内を厳守
上記⑴のとおり、発注内容等を明示しなければなりませんが、明示すべき発注内容等には支払期日が含まれています。
中小受託取引適正化法(取適法)3条は、この支払期日を、給付を受領した日から60日以内としなければならないと定めております。
そのため、契約書や発注書等に記載している支払期日が、給付を受領した日から60日以内となっているかをチェックする必要があります。
この60日は、検査をするか否かにかかわらず、給付を受領した日から計算することになりますので、例えば「納品時の検査に合格した日から60日」などと定めることは中小受託取引適正化法(取適法)3条に違反してしまうことになります。
また、キャッシュフローの観点から電子記録債権やファクタリングを支払方法としている企業もありますが、この場合にも注意が必要です。
中小受託取引適正化法(取適法)5条1項2号は、支払期日(給付を受領した日から60日以内)に代金の額に相当する額の金銭と引き換えることが困難なものを支払方法として使用することを禁止しています。
そのため、電子記録債権やファクタリングを支払方法とする場合であっても、支払期日(給付を受領した日から60日以内)に代金の額に相当する額の金銭が受け取れるようにしなければならないということになります。
そうしますと、電子記録債権やファクタリングを支払方法とするメリットが無くなり、むしろ手数料の負担が生じてしまうことから、中小受託取引適正化法(取適法)が適用される取引においては支払方法として利用されなくなると考えられます。
⑶ 手形払いは禁止
上記⑵とも関連しますが、中小受託取引適正化法(取適法)5条1項2号は、代金の支払い方法として手形を利用することを禁止しています。
改正前の下請法では、一定の条件下で手形での支払いが認められておりましたが、改正後の中小受託取引適正化法(取適法)では手形払いは一律に禁止されることになりました。
上記⑵とは異なり、支払期日(給付を受領した日から60日以内)に代金の額に相当する額の金銭が受け取れるような手形であっても、支払方法として利用することはできませんので、ご注意ください。
⑷ 型の無償保管の禁止
製造委託の取引において、製造が停止した後も型の保管をしてもらうことが慣習化しています。そして、この型の保管が無償とされることがほとんどでした。
そこで、今回の改正と同時に、運用基準が改訂され、無償による型の保管が中小受託取引適正化法(取適法)5条2項2号の「不当な経済上の利益の提供要請」に該当することとされました。
そのため、製造が停止した後も型の保管をしてもらう場合には、保管費用を支払う必要があります。そして、契約書等においてもあらかじめその旨を明記しておくことが望ましいです。
また、どのような場合に型を廃棄するのかなどについても、あらかじめ協議して契約書等に定めておくことをお勧めします。
⑸ 契約書等のチェックも弁護士に相談を

以上のような契約書等のチェックも、弁護士から助言を受けたり、修正作業を依頼したりすることをお勧めいたします。
4 代金額の協議の要請には誠実に対応
中小受託取引適正化法(取適法)5条2項4号は、費用の変動等が生じたため中小受託事業者が価格の協議を求めたにもかかわらず協議に応じなかったり、必要な説明や情報提供をせずに一方的に価格を決定することを禁止しています(協議に応じない一方的な代金決定)。
ここでいう「価格を決定すること」には、代金を引き上げたり、引き下げたりすることだけでなく、金額を据え置くことも含まれます。
運用基準では、協議に応じなかったとされる場合の例として、以下の事例が挙げられております。
- 代金額の引上げの協議を求められたにもかかわらず、これを拒否し、無視し、又は回答を引き延ばすなどにより、協議に応じないこと。
- 代金額の引上げを求められたのに対し、合理的な範囲を超えて詳細な情報の提供を要求し、当該情報の提供を協議に応じる条件とすること。
- 合理的な理由を示して代金額の引上げを求められたのに対し、具体的な理由の説明や根拠資料の提供をすることなく、求められた引上げの一部を拒み、又は従前の代金額を提示すること。
- 代金額の引下げを要請する場合に、その説明を求められたにもかかわらず、具体的な理由の説明や根拠資料の提供をしないこと。
これらの事例をみますと、協議するだけでは足りず、具体的な説明や根拠資料の提供も必要とされている点に注意が必要です。
また、後のトラブルを防止するためには、協議を行った際には、協議を行ったことや協議内容を記録化するために議事録等を作成し、協議で使用した資料も保管しておく必要があります。
なお、同じような規制として、買いたたき(取適法5条1項5号)があります。買いたたきは、通常支払われる対価に比し著しく低い代金額を不当に定めることをいいます。
そして、買いたたきに該当するか否かにおいても、代金額の決定に当たって十分な協議が行われたか否かという点も考慮されることとされておりますので、協議に応じない一方的な代金決定(取適法5条2項4号)と同じような場面を想定しています。
公正取引委員会のパブリックコメントにおいても、事案に応じていずれの規定についても適用される可能性があると指摘されており、その境界線は明確ではありません。
したがって、協議に応じない一方的な代金決定を検討する際には、買いたたきも一緒に検討する必要があります。
特に、労務費(賃金)や原材料費、エネルギーコストなどのコストが上昇したことを理由とする代金額の引上げを求められることが増加しており、これに対する適切な対応を行ってしまいますと、協議に応じない一方的な代金決定や買いたたきとなってしまう可能性があります。
5 中小受託取引適正化法(取適法)にお困りの方は吉田総合法律事務所へご相談ください!
今回の改正は、適用対象が拡大されたり、禁止行為が追加されたりしていますので、企業の皆様には適切な対応が求められています。
また、公正取引委員会は近年体制を強化しており、公表されている勧告事例の数も増えています(公正取引委員会から公表されている下請法違反の勧告事例はこちら をご覧ください。)。
中小受託取引適正化法(取適法)が施行された後も、この流れは継続され、1年後には勧告事例が公表され始めると予想されます。公表される際は企業名や違反行為の内容も明らかにされてしまい、非常に大きなレピュテーションリスクが生じることになります。
そのため、中小受託取引適正化法(取適法)への対応は急務となっています。
他方で、中小受託取引適正化法(取適法)の内容は複雑となっておりますので、弁護士からのアドバイスを受けながら対応していく必要があります。
中小受託取引適正化法(取適法)への対応でお困りの中小企業・中堅企業の皆様は、吉田総合法律事務所へご相談ください。




















