メールやチャットでの発注は命取り?ベンチャー企業におけるフリーランスとの取引に潜む法的リスクへの対応方法を弁護士が解説

【目次】
1 ベンチャー企業が陥りやすいフリーランスの罠
2 フリーランスへのメールやチャットでの「曖昧な発注」は違法!
3 フリーランスとの業務委託のはずが労働問題に発展!?
4 著作権等の知的財産権を巡るトラブルで事業がストップ!?
5 フリーランスとの取引や契約書にお困りの方は吉田総合法律事務所へご相談ください!

1 ベンチャー企業が陥りやすいフリーランスの罠

SlackやChatworkで業務委託のエンジニアに『この機能の実装、お願いします』といつも通り依頼していませんか?

スピードが命のベンチャー企業やスタートアップ企業において、全ての取引で紙の契約書を作成するのは現実的ではありません。

しかし、適切な対応を行わないと、法的な問題が発生してしまうリスクが高まってしまいます。

最悪の場合、資金調達をしようとする時やいざ上場(IPO)の準備に入った時、M&Aのデューデリジェンス(買収監査)の段階でこの法的な問題が発覚し、事業の評価額が暴落する、またはディール自体が破談になってしまうこともあり得ます。

特に、ベンチャー企業やスタートアップ企業では、機動性を高めるために人を雇わずに業務委託(アウトソーシング)することがよく行われていますが、2024年11月に施行されたフリーランス法に引っかかってしまうリスクがあります。

本記事では、ベンチャー企業の事業スピードを落とさずに、フリーランスとの取引に潜む法的リスクへの対応方法を解説します。なお、フリーランスとの取引に潜む法的リスクは様々なものが存在しますが、本記事ではその中でも特に重要なものを取り上げています。

2 フリーランスへのメールやチャットでの「曖昧な発注」は違法!

ベンチャー企業やスタートアップ企業は、社会の変化に対応したり、大企業に対する優位性を確保したりするために、事業スピードを極限まで高める必要があります。

そのため、人を雇用せずに必要な作業等については外注(業務委託)することで、機動性を高めています。

業務委託の場合、労働基準法等の労働関係法規は適用されませんが、フリーランス法が適用されることが多くなります。

フリーランス法はベンチャー企業等にも適用されますので、ベンチャー企業がフリーランスと取引する場合には、フリーランス法に違反しないように注意する必要があります。

フリーランス法では、フリーランスとの取引の内容によって様々なルールを定めていますが、特に重要なのは「取引条件の明示」です。

すなわち、フリーランスに業務委託する際には、一定の取引条件を書面や電磁的記録で明示しなければならないと定められています(フリーランス法3条1項)。

そのため、口頭での依頼や、メールやチャットによる曖昧な条件での発注は、フリーランス法に違反することになります。

例えば、下記のようなものはフリーランス法に違反することになります。

  • 「とりあえず作業を進めておいて。報酬は後で決めよう」とチャットで依頼する。
  • 「資金調達が終わったら、まとめて月末に振り込むよ」とメールで依頼する。
  • 仕様変更のたびに、追加報酬を定めずチャットで追加作業を依頼する。

もっとも、フリーランス法も、フリーランスへ業務委託する際に契約書を作成することまで求めているわけではありません。

法が定めている一定の取引条件を記載した書面を渡したり、メールやチャットで送信したりすることが必要であるとしています。

そのため、フリーランスに外注(業務委託)する際に、一定の取引条件をメールやチャットで送信することを忘れないようにするという対応が必要ということになります。

そこで、一定の取引条件を記載した通知文言のひな形を用意しておくと、フリーランス法に違反してしまうリスクを防止することができます。

なお、フリーランス法の詳しい内容はこちらの記事で解説しておりますので、併せてご覧ください。

3 フリーランスとの業務委託のはずが労働問題に発展!?

ベンチャー企業やスタートアップ企業がフリーランスに外注(業務委託)する場合には、フリーランス法の他にも気を付けなければならない点があります。それが、「偽装フリーランス」という問題です。

「偽装請負」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、本質は同じ問題です。

偽装フリーランスは、簡単に言うと、形式的には業務委託契約としているけれども、実質的には雇用関係となってしまっているために労働契約(雇用契約)が成立してしまうという問題です。

偽装フリーランスとなり労働契約が成立しているとされてしまうと、下記のような問題が発生するリスクがあります。

  • 契約をやめることは解雇になるため、厳格な要件を満たした場合にしか認められなくなる。
  • それまでに払っていた業務委託料は基本給という扱いになるため、時間外労働が発生していれば別途残業代を支払わなければならなくなる。
  • 雇用主として社会保険料も納付しなければならなくなる。

このように、偽装フリーランスの問題が生じると、ベンチャー企業の財務と信用に大きな打撃が生じることになってしまいます。

そのため、フリーランスに外注(業務委託)する場合には、偽装フリーランスとならないように注意する必要があります。

偽装フリーランスについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

4 著作権等の知的財産権を巡るトラブルで事業がストップ!?

ベンチャー企業やスタートアップ企業では、IT関連の事業を行っている企業の割合が多いと言われています。

自社でITを開発する企業もあれば、IT開発をエンジニアに外注する企業もあります。

そのような状況で、外注したエンジニアやデザイナーに報酬を払えば、当然に成果物の著作権等の知的財産権も自社に入ると思っていませんか?

これは大きな誤解です。

著作権法上、著作権は、特段の合意がない限り、「実際に手を動かして作った人(=エンジニアなどのフリーランス)」に帰属します。

そのため、口頭やチャットで「これを作って」と依頼し、納品されたものを使っているだけでは、発注者であるベンチャー企業等は単に「利用させてもらっているだけ」の状態となってしまいます(なお、この場合にフリーランス法の問題が生じることは、上記2の通りです。)。

この場合に起きうる悲劇としては、下記のものが考えられます。

  • フリーランスとの関係が悪化した際、「私のコードを使うな」と差止請求を受ける。
  • 自社のコア技術なのに、他社へ勝手に転売・流用される。
  • IPO審査で「権利関係が不明確」として、上場が延期になる。

特に、①や②では、事業自体がストップしてしまうかもしれません。

これを防ぐためには、明確に「著作権を譲渡する」などといった合意形成が不可欠であり、契約書を作成することが最善策となります。

また、フリーランス法は、知的財産権の譲渡や許諾を業務委託契約書で定める場合、譲渡・許諾に係る対価も定めなければならないとしています。

そのため、フリーランスとの業務委託契約書では、著作権等の知的財産権の譲渡や許諾を定めるとともに、それに対する対価も定める必要があります。

そこで、これらを網羅した通知文言や契約書のひな形を用意しておくことがオススメです。

5 フリーランスとの取引や契約書にお困りの方は吉田総合法律事務所へご相談ください!

ベンチャー企業やスタートアップ企業において、事業スピードを優先するあまり、契約関係が曖昧になってしまうケースは少なくありません。

しかし、本記事で解説したとおり、フリーランスとの取引においては、フリーランス法への対応、偽装フリーランス(労働問題)の防止、そして知的財産権の確保など、多岐にわたる法的リスクが潜んでいます。

これらを放置すれば、事業の発展だけでなく将来の資金調達やIPOにも甚大な影響を及ぼしかねません。

吉田総合法律事務所の弁護士は、フリーランス法はもちろんのこと、労働関係法規や契約審査にも注力しており、いずれにも包括的に対応しております。

そのため、ベンチャー企業が直面する複雑な法的課題に対しても、自信をもって対応いたします。

「現在のチャットでの発注方法がフリーランス法に違反していないか不安だ」、「業務委託契約書や通知文言のひな形を整備したい」など、フリーランスとの取引や契約書についてお困り、お悩みのベンチャー企業は、吉田総合法律事務所へご相談ください。

   

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