
【目次】 1 あなたの会社に潜む「名義株問題」という時限爆弾 2 名義株に関して、多くの経営者が直面する共通の悩み 3 名義株問題の法的構造と解決アプローチ 4 名義株抹消と税務リスクの対応を通じた解決策 5 名義株において時間経過が及ぼす4つのリスクと早期に対策すべき理由 |
1 あなたの会社に潜む「名義株問題」という時限爆弾
中小企業にはいわゆる名義株問題(株の実質所有者と名義人が異なることで起こる問題)が潜んでいることがあります。特に以下のような状況に心当たりがある経営者は要注意です
- 株主に創業者の知人や親戚がたくさんいるが没交渉である
- 「形だけの株主」として名前を貸してもらっている人がいる
- 会社の設立が平成元年以前である

これらの状況は、一見問題なく見えても、実は将来的に会社経営に深刻な影響を与える可能性がある時限爆弾となる可能性があります。
2 名義株に関して、多くの経営者が直面する共通の悩み
名義株問題は決して珍しいことではありません
特に平成2年の商法改正前(1990年以前)に設立された会社では、株式会社の設立に7人以上の発起人が必要だったため、形式的に親族や知人に株主になってもらう事態が多く発生していました。現在でも、銀行や取引先への見栄えの問題や、同族会社の判定を回避するための税務的な理由などで、名義株が生じているケースがあります。
問題は時間とともに深刻化する

名義株問題の厄介な点は、時間が経つにつれて解決が困難になることです。名義人や実質所有者同士では問題にならなくても、彼らが高齢になって認知症になったり相続が発生したりすると、名義株であることを十分に知らない次の世代が当事者となります。事情をよく知らない者のところで株の帰属について争いが生じることもあります。
3 名義株問題の法的構造と解決アプローチ
裁判所は「実質説」を採用
名義株に関する裁判所の基本的な考え方は「実質説」です(最高裁昭和42年11月17日判決)。つまり、形式的な名義にかかわらず、実際に出資した人が真の株主であるという立場を取っています。
ただ、単なる名義株なのか、それとも株式や株式購入資金の贈与があったのかを区別することは非常に難しい問題です。当事者間の明確な合意や証拠がない場合、後になって「贈与だった」「名義貸しに過ぎない」などの主張が対立し、紛争に発展するケースが少なくありません。
実際には、名義人や相続人が議決権を行使し会社の経営権が危機にさらされたり(乗っ取りリスク)、株の買取りを請求されて巨額の出費を強いられるなどのリスクがあります。このようなリスクは株式公開(IPO)や会社売却(M&A)の大きな阻害要因になり、経営のスピード感を大きく損ないます。
一般には、当事者の認識や、資金拠出者、取得目的、利益配当の状況、議決権行使状況などを総合的に考慮して判断がされるのですが、実際には極めて微妙な状況が頻繁に発生します。
西武グループの事実上の持ち株会社であったコクドという会社については、実質株主であることを主張する創業者一族の相続人が訴えを提起しました。この訴えについて東京地裁は、名義人の役員らが実際に株主権を行使していたことを指摘し、名義株であることを否定しました。被相続人は名義を借りたのではなく、支配可能な株主を介して間接的に会社を支配していたと考えるのが合理的であるという判断を述べていますが、このあたりの事情はちょっとした証言や証拠によっても認定が覆る可能性があり、とてもデリケートな認定であったと思われます。
4 名義株抹消と税務リスクの対応を通じた解決策
名義株解消の具体的手法
- 株式の名義書換 実質的な所有者と名義人の合意に基づく最も基本的な方法です。
- 株式譲渡契約の締結 形式的には名義人から実質所有者への株式譲渡という形を取りながら、実質的には名義の是正を行います。
税務リスクへの対応
名義株の解消には税務上のリスクが伴います。税務当局は、名義書換や株式譲渡を新たな経済取引と捉え、贈与税や、みなし譲渡についての所得税の課税を主張する可能性があります。
当事務所では、税理士と連携し、スムーズな名義株の解消を、税務リスクを最小限に抑えた形で実行できるよう、解決策をご提案します。
5 名義株において時間経過が及ぼす4つのリスクと早期に対策すべき理由
時間が経つほど解決は困難に
名義株問題は放置すればするほど複雑になります。特に以下の状況が迫っている場合は、緊急に対応が必要です。
- 株式発行時の事情を知る方の高齢化、認知症の懸念
- 事業承継の準備
- 会社の組織再編やM&A
- 株式公開(IPO)の検討
6 お困りの際は吉田総合法律事務所にご相談下さい
当事務所では、経営権問題を扱う中で、これまで数多くの名義株問題を解決してきました。お客様の具体的な状況に応じて、最適な解決策をご提案いたします。
なお、ご相談時に以下の資料をご持参いただけますと、より具体的で正確なアドバイスが可能となります。

- 株主名簿の写し
- 株式取得時(引受時)の送金履歴や通帳の写し(あれば)
- 名義貸しに関する合意書や念書(あれば)
- 直近3期の株主総会議事録と議決権行使状況
- 配当金の受取状況に関する資料
以上の資料を前提に、ご懸念されている名義株主とのこれまでの接触状況、交渉状況、その方のご性格などをお伺いし、問題解決に向けたアドバイスをさせていただきます。
まとめ
名義株問題は、会社経営において重大なリスクをもたらす可能性がある問題です。しかし、適切な対応により確実に解決できる問題でもあります。
重要なのは、問題を先送りにせず、早期に専門家に相談することです。当事務所では、豊富な経験と専門知識を活かし、皆様の名義株問題を最適な形で解決へと導きます。