取締役会の簡易な開催方法とは?

【目次】

1 取締役会は参加者全員が同じ時間・同じ場所に集まらなければ開催できない?
2 電話会議またはテレビ会議、インターネット会議システムによる方法とは?
3 みなし決議による取締役会の決議とは?
4 取締役会の招集手続きの省略とは?
5 取締役会の開催方法についてお困りの方は吉田総合法律事務所の弁護士へご相談ください

1 取締役会は参加者全員が同じ時間・同じ場所に集まらなければ開催できない?

取締役会を設置している株式会社では、業務執行の決定は取締役会の職務と定められており(会社法第362条2項)、取締役会は株式会社において経営判断を行う重要な機関です。

そのため、取締役会では、各取締役が自身の知識・経験に基づいて意見を述べ、協議を行ったうえで経営判断を行うことが重要です。

このように、取締役はその知識・経験に基づいて意見を述べたり、議決に参加したりすることが求められていますので、取締役会への出席を第三者へ委任することはできないこととされています。

しかし、実際には、スケジュールが合わないなどの理由により、同じ時間・同じ場所に全員が集まって取締役会を開催することができないこともあります

そのような場合に、同じ時間・同じ場所に集まらずに取締役会を開催する方法が認められています。

非上場の中小企業では、取締役の数も限られており、業務に携わっている社内取締役がほとんどですので、以前は同じ時間に同じ場所に集まることが容易でした。しかし、コロナ禍を経て、非上場の中小企業においても同じ時間に同じ場所に集まらずに取締役会などの会議を行うことの利便性が認識され、ニーズが生まれてきています。特に最近では非上場企業でも海外子会社があり、その子会社担当取締役が海外にいることも多くなる等の事情で、臨機応変に本社会議室に集まりにくいという会社も増えてきました。

そこで、本記事で取締役会の簡易な開催方法を解説いたします。

2 電話会議またはテレビ会議、インターネット会議システムによる方法とは?

まず、取締役会の簡易な開催方法として、電話会議またはテレビ会議インターネット会議システムによる方法があります。

いずれも、取締役会の会場(本社会議室などの開催場所)と外にいる取締役を電話やインターネットで接続し、参加者同士の音声や画像が即時に伝わり適時的確に意思疎通を行うことができる方法です。

これによれば、取締役の一人は取締役会の開催場所に行かなければなりませんが、それ以外の取締役や監査役は、開催場所以外の場所から取締役会に参加することができます。

例えば、一人の取締役が出張先から急遽帰社できなくなってしまった場合にも、出張先のホテルの部屋からインターネット会議システムにより取締役会に参加することも可能となります。

なお、電話会議またはテレビ会議、インターネット会議システムを使用した場合には、それにより出席した取締役を議事録に記載する必要があります(会社法施行規則第101条3項1号)。

3 書面決議(みなし決議)による取締役会の決議とは?

上記2は、取締役会を実開催する場合の簡易な開催方法です。

これに対して、取締役会を開催せずに、書面の作成のみで取締役会決議があったものとみなす方法もあります(会社法第370条)。これが、取締役会の書面決議(みなし決議)です。

これによれば、参加者との間で、取締役会の日時や場所を調整する必要もありません。 もっとも、この取締役会の書面決議(みなし決議)を行うためには、書面決議(みなし決議)を行える旨をあらかじめ定款に定めておかなければなりません。定款に定めていない場合には、定款変更の手続きが必要となります(定款変更の手続きについては、こちらの記事 をご覧ください。)。

そのうえで、議案の内容について取締役全員の同意が必要となります。

また、監査役のいる会社では、業務監査権限のある監査役が議案の内容について異議を述べていないことも必要となります。実務では、業務監査権限のある監査役からも「異議なし」の意思表示を書面かメールで受けとることが多いです。

したがって、取締役または監査役が一人でも議案の内容に反対しているような場合には、書面決議(みなし決議)を行うことはできないということになります。

なお、監査役の業務範囲を会計監査に限定している株式会社では、取締役会の書面決議(みなし決議)につき監査役が異議を述べていないことは要件ではありません。そのため、この場合には、取締役全員の同意だけで取締役会の書面決議(みなし決議)を行うことができます。

このように、取締役会の書面決議(みなし決議)はいくつかのハードルがありますが、意思疎通が図られている中小企業においては、簡便に取締役会決議を行うことができることがあります。

なお、株主総会の書面決議については、こちらの記事 をご覧ください。

4 取締役会の招集手続きの省略とは?

取締役会を実開催する場合、取締役会の招集手続きを省略することも認められています。

取締役会を実開催する場合、通常は、取締役会の日の1週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にはその期間)前まで各取締役及び各監査役に対し招集通知を発送しなければなりません(会社法第368条1項)。

もっとも、取締役及び監査役の全員が同意する場合には、招集手続きを経ずに取締役会を開催することができます(会社法第368条2項)。

取締役全員が日常的に顔を合わせているような中小企業においては、招集手続きを行わずに取締役会を開催し、招集手続きを行わないことについて誰も問題としないようなケースもあります。このような場合では、招集手続きを行わないことについて取締役全員が黙示的に同意していると考えることができます。しかし、黙示的な同意は後日に「そうではない」という紛議要因になる場合もありますので、できるだけ黙示的な同意ではなく、書面等により明示的な同意を得ることが安全です。

5 取締役会の開催方法や、必要書類の記載内容等についてお困りの方は吉田総合法律事務所の弁護士へご相談ください

取締役会は株式会社の重要な機関ですが、株主総会と比べて、その手続きが軽視されているように感じることがあります。
しかし、株主や取締役との間で対立関係が生じてしまった場合、取締役会の手続きに落ち度があると、法的紛争に発展する根拠を与えることになってしまうことがあります。
そのようなことを防止するためにも、取締役会の適切な開催方法を検討し、法的リスクを生じさせないことが重要です(なお、取締役会の法的リスクについては、こちらの記事 もご覧ください。)。

吉田総合法律事務所の弁護士は、取締役会の開催方法についても法的サポートを行っています。簡易な開催方法の検討や提案、招集通知や取締役会議事録の作成、スケジュールの提案・管理、開催の要否に関するアドバイスなど、企業の具体的事情に合わせた法的サポートを提供しています。
取締役会の開催方法についてお困りの企業、経営者の方は、吉田総合法律事務所へご相談ください。

   

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