事業譲渡における競業避止義務とは?

【目次】
1 事業譲渡とは?競業避止義務とは?
2 競業避止義務に関する会社法上の定めは?
3 競業避止義務を事業譲渡契約書で定めておくことがオススメ!
4 事業譲渡や競業避止義務についてお困りの方は吉田総合法律事務所の弁護士へご相談ください

1 事業譲渡とは?競業避止義務とは?

企業は、様々な資産(ヒト・モノ・カネ・情報など)を使用して事業活動を行います。

企業は一つの事業についてのみ活動することもありますが、ビジネス環境の変化スピードの速い現在では中小企業でも経営リスクヘッジのために経営多角化(複数の事業展開)が多くなっています。

そして、企業が行っているある事業の全部又は一部を他の企業に譲り渡すことがあります。これを「事業譲渡」といいます。

最近では、事業拡大型M&Aだけでなく事業承継の親族外承継の手法として事業譲渡が使われることが増えています。

事業譲渡により事業を譲り受けた企業(以下、「譲受会社」といいます。)は、譲り受けた事業価値を全て活用することを前提に事業譲受けをすることが多いはずです。

ここで、事業譲渡をした企業(以下、「譲渡会社」といいます。)が、譲渡後に自社で譲渡事業と同種事業を行ってしまうと、譲受会社の当該事業の活動を阻害してしまいます。

特に、譲渡会社には、その事業活動のノウハウ取引先との関係性(人間関係を含みます)といった優位性があることが多いため、譲受会社の事業活動の妨害も可能になります。

そのため、事業譲渡では譲渡会社に対して、同種の事業を行うことを禁止するという、競業避止義務を課す必要があります。

2 競業避止義務に関する会社法上の定めは?

事業譲渡における譲渡会社の競業避止義務については、会社法に規定があります。

会社法第21条1項において、譲渡会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市区町村の区域内及びこれに隣接する市区町村の区域内において、事業譲渡の日から20年間、同一の事業を行ってはならない旨が定められています。

この規定により「当事者の別段の意思表示がない限り」、譲渡会社は、20年という長期間にわたって譲渡した事業を行うことができなくなってしまいます。

もっとも、この競業避止義務には、場所的な限定がなされています。この規定では、同一の市区町村及び隣接する市区町村では、同一の事業を行うことが禁止されています。

そのため、その範囲外においては、譲渡会社も譲渡した事業と同一の事業を行うことができます。

ここで、「同一の市区町村の区域内」とは、何を基準とするのかが問題となります。

この問題については、以下の二つの考え方がありますが、①の考え方が一般的のようです。

  • 譲渡する事業を行っている本店・支店・営業所が所在する市区町村を指すという考え方
  • 譲渡する事業の活動が行われている市区町村も含むという考え方

もっとも、インターネットなどにより事業活動が広範囲に行えるようになった現代においては、①の考え方では譲受会社が十分に保護されないことになってしまいます。

例えば、インターネット販売を行う事業を事業譲渡した場合、譲渡会社が同一の市区町村及び隣接する市区町村以外の場所に支店等を設置すれば、同一のインターネット販売事業を行うことができてしまいます。これでは、譲受会社が譲り受けた事業を妨害されてしまうことになります。

会社法第21条1項は、インターネットが普及する以前からある規定ですので、現在のビジネス状況に合っていないといえます。

また、この問題について明確に判断した裁判例がなく、①と②のいずれであるか明確ではありません。

そのため、もしも②の考え方が認められてしまった場合には、譲渡会社は事業譲渡後の事業活動が広く制限されてしまうリスクが出てきます。

3 競業避止義務を事業譲渡契約書で定めておくことがオススメ!

上記2のとおり、インターネットが普及した現代において、会社法第21条1項の定める競業避止義務は適切ではありません。特に、現時点で有力な説とされている前記①の考え方によりますと、譲受会社側にとっては、事業譲渡後に譲渡会社に同一の事業を行われてしまうリスクが高くなってしまいます。

また、会社法第21条1項の解釈が分かれていることから、譲渡会社の事業活動が委縮されてしまうということもあります。

そのため、ビジネスの観点からは、事業譲渡契約書で対象となる事業の内容等に合わせて、競業避止義務を定めておく必要があります

会社法第21条1項は、当事者間の合意により変更することができますので、実務上は、事業譲渡契約書で適切な競業避止義務を定めることが一般的です。

例えば、競業避止義務の場所的限定をせずに全世界を対象としたり、競業避止義務を課す期間を5年と短くしたりすることも可能です。また、競業避止義務を排除することも考えられます。

どのような内容の競業避止義務とするかは、譲渡会社と譲受会社の交渉によることとなります。

この交渉をどのように有利に進めるかは弁護士の腕の見せ所(代理人として表に出る場合もあれば、バックアドバイザーとして依頼者に具体的アドバイスをして依頼者に効果的交渉をしてもらう等)でありますが、詳細は割愛します。

また、事業譲渡契約書には具体的にどのように記載すべきかは交渉内容によりますが、当事者にとって関心の高い事項だと思います。この点は交渉がスムーズにまとまる場合もあれば、当事者間の利益調整が難航し、根気よく(粘り強く)数度の交渉提案と事業譲渡ドラフト改訂作業を実践する場面もあります。その際は交渉慣れしていない(Ex.本格的M&Aが始めて等)の場合にはメンタル疲弊の心理状態になることも稀ではありません。

吉田総合法律事務所は、M&A慣れしたプロ的依頼者の事案も、M&Aが初めてというメンタルアドバイスも含めて包括サポートを求める依頼者の事案についても多数の業務経験があります。

4 事業譲渡や競業避止義務についてお困りの方は吉田総合法律事務所の弁護士へご相談ください

事業譲渡は、M&Aや後継者への事業承継として行われることが増えています。

事業譲渡では、対象となる事業の内容、範囲や、対価の金額等が重要視される傾向にあります。

しかし、譲受会社としては、事業譲渡後に譲り受けた事業で利益を上げることができるかという点も、しっかりと検討しなければなりません。

その際に、譲渡会社に適切な競業避止義務が課されているかという点は、非常に重要な要素となります。

また、譲渡会社としても、他の事業活動が制約されてしまったり、企業の発展に影響が生じたりしないよう、過度な競業避止義務が課されてしまわないかと十分に検討する必要があります。

そのため、事業譲渡を行う場合には、専門家のサポートを受けることが重要です。

吉田総合法律事務所では、事業譲渡に関する法的サポートを行っております。

事業譲渡や競業避止義務でお困りの企業・経営者の方は、吉田総合法律事務所へご相談ください。

   

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