
| 【目次】 1 ベンチャー企業が陥りやすい共同創業の罠 2 ネットの「創業者間契約のひな形」では防げない株の持ち逃げリスク 3 最悪の事態を防ぐ「強制買取条項(コールオプション)」の定め 4 創業者間契約で強制買取のルールを定めておく必要性 5 創業者間契約にお困りの方は吉田総合法律事務所へご相談ください! |
1 ベンチャー企業が陥りやすい共同創業の罠
気の置けない仲間や、優秀なパートナーとの共同創業。それぞれの強みを持ち寄り、希望に満ちてスタートを切る「ハネムーン期間」は素晴らしいものです。
そのため、創業時の出資比率(株式の割合)を「社長50%:副社長50%」や「3人で33%ずつ」と安易に決めてしまうケースが散見されます。
しかし、もし1年後、株式を持つ共同創業者が「モチベーションが下がった」、「別の事業をやりたい」と言って突然会社を辞めてしまったら、何が起きるでしょうか?
株式は一度発行してしまえば、個人の財産となります。共同創業者が会社を辞める際に「辞めるなら株式を返してくれ」と頼んでも、法的な返還義務はないため、断られてしまうかもしれません。
この場合、共同創業者は会社を辞めた後も株式を持ち続けることができてしまいます。そして、残された経営陣が事業を成長させて利益を上げると、会社を辞めた共同創業者も配当や株価という形で利益を得ることになってしまいます。

また、株式が分散していると、株主総会で辞めた共同創業者の賛成を得られずに、会社としての重要な意思決定ができなくなるデッドロックが生じるリスクもあります。 株主総会の決議に影響の出ない数の株式しか保有していない場合であっても、いわゆる少数株主として会社の経営に口を出してくることもあり得ます。
なお、少数株主については、こちらの記事もご覧ください。
2 「創業者間契約」のひな形では防ぎきれない株式の持ち逃げリスク
このような事態を防ぐために結ぶのが「創業者間契約」です。
「創業者間契約」は、株式を保有する共同創業者(株主)の間で締結するものであり、株主間契約の一つです。株主間契約は、経営や株式譲渡に関して契約当事者の株主の間でルールを定めておくものです。
最近では、「創業者間契約」を締結する必要があることは知っている方が、費用を抑えるためにインターネット上で「創業者間契約 ひな形」と検索し、無料のテンプレートをダウンロードして社名だけ変えて済ませようとするベンチャー企業やスタートアップ企業も少なくありません。また、生成AIを使って創業者間契約書を作成することもあると思われます。
しかし、ネットのひな形や生成AIで作った契約書をそのまま使用するのは危険です。

なぜなら、ネットなどの一般的なひな形や生成AIが作った契約書には「誰が、どのような理由で退任した場合に、いくらで株式を買い取るのか」という、自社のビジネスモデルや創業メンバーの役割に応じた緻密な設計(条件の設定)が欠落していることが多いからです。ひな形などはあくまで一般的な内容を定めたものですので、自社の個別具体的な状況に応じた契約内容に修正する必要があります。
このことを理解せずにひな形などをそのまま使用してしまうと、いざトラブルになった際に、会社や事業に影響を生じない形での株式の買取を行うことができない事態になってしまうことも考えられます。その結果、辞める共同創業者から法外な株式の買取価格を要求され、会社や事業の存続が危ぶまれてしまうケースもあります。
3 最悪の事態を防ぐ「強制買取条項(コールオプション)」の定め
株式の持ち逃げリスクを排除して会社を守るためには、自社の実情に合わせた「強制買取条項(コールオプション)」を創業者間契約で定めることが不可欠です。
強制買取条項とは、創業者が特定の事由(自己都合退職、取締役の解任など)で会社を離れる場合に、会社または残った創業者が、辞める創業者が保有する株式を強制的に買い取ることができるルールのことです。

ここで重要なポイントは、強制的に買い取る株式の価格を一義的な金額に定めることです。例えば、創業者間契約において「株式の買取価格は別途協議して定める」などと定めてしまった場合、買取価格についての協議がまとまらないことは十分に考えられます。買取価格が確定しなければ株式を買い取ることはできませんので、この場合には、株式を買い取ることができないという結果になってしまいます。
そのため、創業者間契約では、強制的に買い取る際の株式の価格を明確に定める必要があります。例えば、「株式の買取価格は、取得価格とする」などとすることもあります。
4 創業者間契約で強制買取のルールを定めておく必要性
これから一緒に会社を設立して事業を発展させていこうというタイミングで、会社を辞めることになった場合のことを考えたり、契約書に記載したりすることには抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実際に共同創業者が辞めるタイミングで株式の買取や買取価格の話合いをしても、まとまらない可能性が高いです。強制買取条項を定めた創業者間契約を締結するには、共同創業者が同じ方向を向いている、会社設立のタイミングしかありません。この「平和な時」にこそ、最悪の事態を想定したこれらルールを定めて、強力な「平和協定」を結んでおくことが、経営者の最大の責務です。

これは、最近話題の婚前契約と同じ考え方といえます。
配偶者は結婚のパートナーであるのに対して、共同創業者は会社や事業のパートナーです。いずれも、一番幸せな時期に、関係が悪化してしまったときのことも決めておくことで、より最悪な事態を回避することができます。
5 創業者間契約にお困りの方は吉田総合法律事務所へご相談ください!
ベンチャー企業やスタートアップ企業において、仲間を疑うような契約は結びづらいという感情的なブレーキが働き、創業者間契約が後回しになってしまうケースは少なくありません。また、共同創業者が辞めるときのことまで気が回らないということも考えられます。
しかし、本記事で解説したとおり、会社設立時に創業者間契約を締結しないと後戻りができない致命傷となります。
吉田総合法律事務所の弁護士は、ベンチャー企業が直面する複雑な法的課題に対応しており、また、共同創業者の絆を壊すことなく、創業者間契約を締結できるように配慮しております。
また、本記事で取り上げた「強制買取条項(コールオプション)」の他にも、共同創業者が第三者に株式を譲渡しようとする場合に他の共同創業者が優先的に買い取ることができる「先買権」や「優先提案権」を創業者間契約で定めることもあります。このように、創業者間契約では、万が一のことも想定して会社や事業を継続できるように制度設計をする必要があります。その際には、弁護士のアドバイスを受けながら制度設計を行うことが有益です。

「現在の株式の分け方で、将来問題にならないだろうか」、「ネットのひな形で済ませてしまったが、法的に有効か不安だ」など、創業者間契約についてお困り、お悩みの経営者は、吉田総合法律事務所へご相談ください。




















