Q1 労働条件明示のルールとは何ですか?
A1
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません(労働基準法15条1項)。労働条件の明示の方法は、厚生労働省令である労働基準法施行規則5条により定められています。
労働条件の明示は、一般的には、労働条件通知書(厚労省の様式はこちら)で行います。
Q2 労働条件明示のルール(労働基準法15条1項)に違反するとどうなりますか?
A2
使用者は、行政、刑事、民事の3方面から不利益を被ります。
- ① 労基署の是正勧告(行政指導です。)を受ける可能性があります。
- ② 罰則(30万円以下の罰金)を受ける可能性があります(労働基準法120条1号)。
- ③ 労働契約が解除されたり、損害賠償請求をされる可能性があります。
労働基準法15条1項に基づき明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は、即時に労働契約を解除することができます(労働基準法15条2項)。
また、明示された労働条件は労働契約の内容となりますので、労働者は使用者に対して明示されたとおりの労働条件の履行を使用者に求めることができますし、その要求に応じない場合は債務不履行を理由に損害賠償を求める(民法415条)こともできます。
Q3 労働条件明示のルールに関し、改正された法令等は何ですか?
A3
2023年3月、労働基準法施行規則5条が改正され、労働条件として明示しなければならない事項が追加されました。また、これに関連して、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号。いわゆる、雇止め告示)も改正されました。
Q4 これらの改正は、いつから適用されますか?
A4
これらの改正は、2024年4月1日から適用されます。
Q5 これらの改正に当たり、各企業が行うべきことは何ですか?
A5
自社の労働条件通知書のひな形書面を改正法等に合わせて改訂することが必要です。適法性について弁護士等の専門家に確認されると万全です。また、有期契約労働者への説明事項についてQ10、11をご確認ください。
Q6 改正後のモデル労働条件通知書のイメージは?
A6
改正後のモデル労働条件通知書のイメージはこちら(厚労省HP)です。
Q7 今回の法改正で、全ての労働者に対して明示しなければならなくなった事項(追加事項)は何ですか?
A7
雇い入れ直後の就業場所・従事すべき業務の内容に加え、これらの「変更の範囲」についての明示が必要になります(労働基準法施行規則5条の改正)。
Q8 (全ての労働者に対する明示事項に関し)「変更の範囲」とは何ですか?
A8
「変更の範囲」とは、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲を指します。
Q9 今回の法改正で、有期契約労働者に対して明示しなければならなくなった事項(追加事項)は何ですか?
A9
3つあります。
- ① 有期労働契約の更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示(労働基準法施行規則5条の改正)
- ②「無期転換申込権」が発生する契約更新時に、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示(労働基準法施行規則5条の改正)
- ③「無期転換申込権」が発生する契約更新時に、無期転換後の労働条件の明示(労働基準法施行規則5条の改正)
Q10 (有期契約労働者の)更新上限を新設・短縮する場合に、労働者に説明すべき事項は何ですか?
A10
更新上限を新設・短縮する場合は、その理由を有期契約労働者にあらかじめ説明しなければなりません(雇止め告示の改正)。
Q11 (有期契約労働者の)無期転換後の労働条件を明示する場合に、労働者に説明すべき事項は何ですか?
A11
無期転換後の労働条件を明示する際、労働条件を決定するに当たって、労働契約法3条2項の規定の趣旨を踏まえて就業の実態に応じて均衡を考慮した事項について、説明するよう努めなければなりません(雇止め告示の改正)。
Q12 (無期転換後の労働条件の明示に関して)労働契約法3条2項の規定の内容は何ですか?
A12
労働契約法3条2項は、労働契約は労働者と使用者が就業の実態に応じて均衡を考慮しつつ締結又は変更すべきものとしています。
Q13 (無期転換後の労働条件の明示に関して)労働契約法3条2項の趣旨を踏まえた就業の実態に応じて均衡を考慮した事項とは何ですか?
A13
他の通常の労働者(正社員等のいわゆる正規型の労働者や無期雇用フルタイム労働者)とのバランスを考慮した事項(例:業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)です。
Q14 今回の法改正等に関する参考資料を教えて下さい。
A14
厚労省HP「令和4年度労働政策審議会労働条件分科会報告を踏まえた労働契約法制の見直しについて(無期転換ルール及び労働契約関係の明確化)」をご覧ください。
・リーフレット 2024年4月から労働条件明示のルールが変わります
・通達 労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について
・省令・告示