株主提案権とは?行使要件と会社側の実務対応・防衛策を弁護士が解説

「株主提案権」と聞くと、ニュースで話題になる上場企業のアクティビスト(物言う株主)が行うことをイメージされる経営者の方も多いかもしれません。

非上場会社においても、株主提案権が問題となることがあります。

特に、社歴の長い同族会社において、少数株主となってしまった同族株主から経営権・支配権争いのために株主提案権が行使されることがあります。

非上場会社では、上場会社と比較して、会社法などのルールを厳格に守っていないことも少なくなく、株主提案権が行使されたときに会社側が誤った対応をとってしまうと、会社の経営が揺らいでしまうことになってしまいます。

そのため、株主提案権が行使されたときの会社の対応を確認しておくことは、安定した会社経営を行うために重要です。

本記事では、株主提案権の要件や会社としての実務対応を詳しく解説します。
なお、少数株主については、こちらの記事もご覧ください。

【目次】
1 株主提案権とは?会社法上の位置づけと3つの類型
2 株主提案権の行使要件
3 提案できる議案の数の制限(10個上限ルール)
4 会社が株主提案を「拒否」できるケースと法的リスク
5 株主提案を受けた際の実務対応フロー
6 非上場・同族会社における株主提案権と防衛策
7 株主提案権への対応でお困りの企業・経営者は吉田総合法律事務所へご相談ください

1 株主提案権とは?会社法上の位置づけと3つの類型

株主提案権とは、株主が株主総会において特定の事項を議題としたり、具体的な議案を提出したりする権利です。

株主総会の議題や議案は、原則として取締役会が決定するものですが、株式会社の所有者である株主の意思を経営に反映させるために認められているものが株主提案権になります。

この株主提案権は、以下の3つに区別されています。

種 類根拠条文概 要具 体 例
議題提案権会社法
303条
株主総会の決議事項(議題)を追加するよう請求する権利「取締役Aを解任する件を議題とすることを請求する」
議案提案権会社法
304条
既存の決議事項について具体的な内容(議案)を提出する権利(いわゆる動議)取締役選任の議案について「B氏を取締役候補者とする議案を提案する」
議案要領通知請求権会社法
305条
議案の要領を会社が発送する招集通知に記載するよう求める権利「会社が発送する招集通知に、株主提案の議案についての提案理由も記載することを請求する」

なお、上記の株主提案権とは別の権利として、株主には株主総会の招集を請求できる権利(株主総会招集権)も認められています(会社法第297条)。

この株主総会招集権は、何らかの理由で株主総会が開催されないため株主総会を招集するよう求める権利です。

これに対して、上記の株主提案権は、開催が予定されている株主総会に関して、議題や議案を提案等する権利であり、株主総会招集権とは利用される場面が異なっています。

2 株主提案権の行使要件

株主提案権は無条件に行使できるわけではなく、会社法上の持株要件や行使期限が定められています。

この持株要件や行使期限は、株主提案権の種類ごとに、公開会社であるか非公開会社であるか、また、取締役会設置会社であるか取締役会非設置会社であるかによって変わってきます。

⑴ 議題提案権の行使要件

①公開会社かつ取締役会設置会社の場合

持株要件は、総株主の議決権の100分の1以上又は300個以上の議決権を6か月前から継続して保有することが必要です。

権利の行使期限は、株主総会の8週間前までです。

②非公開会社かつ取締役会設置会社の場合

持株要件は、総株主の議決権の100分の1以上又は300個以上の議決権を有することが必要です。

権利の行使期限は、株主総会の8週間前までです。

③非公開会社かつ取締役会非設置会社の場合

持株要件は、議決権を1個でも保有していれば満たします。

権利の行使期限はありません。

⑵ 議案提案権の行使要件

議案提案権については、持株要件や権利の行使期限はありません。

そのため、事前に会社に通知等をすることは必要ではなく、株主総会の場でいきなり議案を提案すること(いわゆる動議)もできます。

もっとも、権利行使の濫用を防止するために、議案が法令・定款に違反する場合や、実質的に同一の議案につき株主総会で10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年経過していない場合には、議案提案権を行使することはできません(会社法第304条)。

⑶ 議案要領通知請求権の行使要件

 

①公開会社かつ取締役会設置会社の場合

持株要件は、総株主の議決権の100分の1以上又は300個以上の議決権を6か月前から継続して保有することが必要です。

権利の行使期限は、株主総会の8週間前までです。

②非公開会社かつ取締役会設置会社の場合

持株要件は、総株主の議決権の100分の1以上又は300個以上の議決権を有することが必要です。

権利の行使期限は、株主総会の8週間前までです。

③非公開会社かつ取締役会非設置会社の場合

持株要件は、議決権を1個でも保有していれば満たします。

権利の行使期限は、株主総会の8週間前までです。

このように、発行済株式総数が少ない非上場会社においても、1%でも株式を保有していれば(取締役会非設置会社では1株でも株式を保有していれば)、株主提案権を行使することができてしまうことになります。

3 提案できる議案の数の制限(10個上限ルール)

株主提案権は、株式会社の所有者である株主の権利を保護するとともに、株主総会の活性化を目的とするものです。

しかし、特定の株主が大量の提案を提案して株主総会の運営を麻痺させるといったように、株主提案権が悪用されてしまうケースが問題となったために、令和元年の会社法改正により提案できる議案の上限が設けられました。

現在の会社法では、1人の株主が1回の株主総会において提案できる議案の数は、最大10個までに制限されています(会社法305条4項)。

そのため、10個を超える提案がなされた場合には、会社は超えた分の提案を拒否することができます。

なお、この場面に限定して、特定の議案の数の数え方が会社法第305条第4項で定められています。上限の10個を超えるか否かは、この数え方に従って計算することになります。

取締役等の役員を選任することに関する議案については、本来であれば「候補者1名につき1個」と数えます(5名の取締役選任を求める場合は5個分)。しかし、株主提案権の上限規制においては、まとめて1個の議案とみなされます(5名の取締役選任を求める場合でも1個分)。

取締役等の役員を解任することに関する議案についても、上記の役員選任の議案と同様の数え方をします。

定款変更に関する議案については、原則として議案の内容である事項ごとに1個として数えます。ただし、複数の事項であっても、異なる議決がされると矛盾する可能性がある場合には「合わせて1個」の議案と数えることになります。

4 会社が株主提案を「拒否」できるケースと法的リスク

株主から株主提案権が行使された場合には、会社は適法な株主提案権の行使であるか否かを確認する必要があります。

そして、行使要件を欠いている場合には、株主提案権を拒否することになります。

また、行使要件は満たしていても、株主提案権が権利の濫用である場合には、株主提案権を拒否することもあり得ます。

しかし、これまでの裁判例では、権利の濫用に該当するか否かは極めて厳格に判断されます。

会社や経営陣にとって都合が悪いからといって安易に権利の濫用に該当するとして株主提案権を拒否すると、株主総会決議取消しの訴え(会社法831条1項)を提起されたり、取締役個人に100万円以下の過料(会社法976条19号)が科されたりすることになりかねません。

そのため、議決権の票読みをして株主提案の議案を否決できる見込みが高いと判断できる場合には、株主提案権の行使を認めたうえで、株主総会で当該議案を否決するという処理を行うこともあります。

5 株主提案を受けた際の実務対応フロー

株主提案書が届いた場合には、株主総会までのタイムリミットという制限の中で、適切な初動対応が求められます。

基本的には、下記のフローで対応することが考えられます。


①株主提案の受領・行使要件チェック
  └ 到達日(8週間前か)、株主名簿上の資格、議案の数(10個以内か)を確認
   |
   |─ 要件不備・正当な拒否事由あり ──> 拒否の通知
   |
   ▼ 適法な提案
②取締役会での審議
  └ 会社の対応(反対・賛成・対案提示など)とその理由を決定
   |
③招集通知への記載
  └ 招集通知に株主の提案要領を記載。あわせて取締役会の「反対意見」を付記
   |
④総会当日の議事運営
  └ 提案株主の発言時間を適正に管理し、議長権限(不規則発言の制止等)を行使

6 非上場・同族会社における株主提案権と防衛策

ニュースや報道などで株主提案権を目にする場面というのは、上場企業における総会対応がほとんどと思われます。

しかし、非上場会社においても、株主提案権が行使される場面は存在します。そして、その一場面が、同族会社における親族間や創業メンバー間の泥沼化した経営権争いです。

創業者一族の相続で株式が分散したり、経営方針の対立で役員を退任した元創業メンバーが株式を保有し続けたりしている場合、株主提案権は「役員の総替え」や「過去の不正追及」を行うための絶好の攻撃手段となります。

実際に株主提案の議案が可決されることは少ないと思われますが、株主提案権への対応を行うこと自体も会社にとっては負担になります。

また、このような場合には、株主提案権の行使にだけでなく、計算書類や会計帳簿の閲覧・謄写請求、株主総会議事録や取締役会議事録の閲覧・謄写請求も行い、資料を収集した上で役員個人の責任を追及する株主代表訴訟を起こしてくることも考えられます。

そのため、そもそも株主提案権を行使されないような体制を作っていくことが重要になります。

例えば、株主の相続時に株式が分散することを防止するために相続人等に対する株式の売渡請求制度を定款で定めておくことや、少数株主から適切なタイミングで株式を買い取っておくこと(株式譲渡や自己株式の取得)などの対応をしていくことで、安定した経営体制を築いていく必要があります。

(相続人等に対する株式売渡請求制度については、こちらの記事をご覧ください。)

また、同族会社において株主提案権を行使してくる場面では、少数株主には真の狙いがあることが少なくありません。そして、それはこれまでの会社への貢献なども考慮した適正な価格での株式の売渡しであるということがあります。

そのため、株主提案権に対する適切な対応をするとともに、真の狙いである株式の売渡し(会社による買取)も並行して検討することで、抜本的な解決を目指すことになります。

7 株主提案権への対応でお困りの企業・経営者は吉田総合法律事務所へご相談ください

株主提案を受けた際の対応は、限られた時間の中での判断ミスが会社の経営権を左右することになります。

当事務所では、会社法よる適法な対応をアドバイスするとともに、「相手方株主の真の狙いはどこにあるのか」、「泥沼化を避けつつ、いかに経営陣の経営権・支配権と会社利益を守り抜くか」という現場に寄り添った解決策をご提案いたします。

また、株主提案権を行使されないような体制を構築することも重要ですので、株主からの事前打診があった段階や、親族間・株主間の対立の兆候が見られた段階で、お早めに吉田総合法律事務所までご相談ください。

   

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